新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)が深刻だった中国では、1月下旬から2月にかけて経済活動がほぼ停止する大打撃を受けた。中国の主要経済指標は軒並み過去最低を記録し、世界銀行は今年の経済成長率が44年ぶりの低水準になる可能性があると指摘する。足元では経済活動の再開が進むものの世界的な感染拡大という新たなリスクもあり中国経済の減速懸念が強まっている。
新型コロナの直撃で「壊滅的」(エコノミスト)という程のショックを受けた中国経済。小売売上高などの主要統計は、1~2月に軒並み過去最低を更新し初のマイナスにまで悪化した。感染防止のため企業活動が長期間、停止を余儀なくされたことが響いた。
だが、3月に入ったころから中国政府は「流行はピークを過ぎた」という見解を前面にし、企業活動の再開を急いでいる。震源地の湖北省武漢市でも、3月11日にホンダが工場の操業を再開。企業の景況感も最悪期は脱したもようだ。
中国国家統計局と中国物流購買連合会は31日、景況感を示す3月の製造業購買担当者指数(PMI)が52・0だったと発表。2月は過去最低の35・7だったが、好不況を判断する節目の「50」を2カ月ぶりに上回った。ただ、統計局は「企業の生産・経営が、疾病前の水準に回復したことを意味しているわけではない」と慎重姿勢だ。
現在、中国は世界での感染拡大を警戒する。それにより世界的に需要が減退し、中国経済悪化の“第2波”が懸念されるためだ。先行きに漂う暗雲に対し、習近平指導部も積極的な財政出動を行う構えを見せる。3月27日の中国共産党中央政治局会議では、財政赤字拡大を容認し13年ぶりに特別国債を発行する方針を決めた。
中国は2008年のリーマン・ショック直後に4兆元(当時のレートで約57兆円)の大型景気対策を打ち出し、世界経済の回復にも寄与した。しかし、過剰債務などの構造問題が深刻化する“後遺症”に今も悩まされており、今回は中国にどこまで期待できるか不透明だ。(北京 三塚聖平)