【ワシントン=塩原永久】国際通貨基金(IMF)は14日に公表した世界経済見通しで、今年の世界全体の実質成長率をマイナス3・0%と予測した。新型コロナウイルスの感染拡大で経済活動が停滞し、日本がマイナス5・2%となるなど、主要先進国が軒並みマイナス成長に転じる。IMFはパンデミック(世界的流行)の長期化や再発する恐れがあり、「一段と大きい景気悪化も十分考えられる」と分析している。
ゴピナス・チーフエコノミストは「世界経済は(1930年代の)世界恐慌以来、最悪の景気後退となるだろう」と指摘。金融危機「リーマン・ショック」後の2009年に記録したマイナス0・1%を上回る景気悪化になると説明した。
感染症対策として実施された外出禁止や集会制限が消費や生産に悪影響を及ぼし、20年の世界全体の成長率見通しを今年1月段階から6・3ポイント下方修正した。イタリアのマイナス9・1%を筆頭にユーロ圏はマイナス7・5%に落ち込む。
米国は19年のプラス2・3%から20年にマイナス5・9%へと急落。中国は20年にプラス1・2%まで減速し、世界経済は成長の牽引(けんいん)役を失う。高い成長率を誇った新興国全体も20年にマイナス1・0%に沈む。
IMFは20年後半に感染が収束し、感染症対策が段階的に解除されていくと想定。21年は世界全体でプラス5・8%を見込んだ。
ただ、先進国、新興国とも、新型コロナで失った経済規模を取り戻せるほどの力強い景気回復を遂げることはないとの見通しだ。
さらにIMFは、景気の行方は感染の動向次第で、「見通しに大きな不確実性がある」と強調。パンデミックが長引き、21年に再発する想定だと、成長率がさらに8%下振れする可能性があるとの分析を示した。