双龍自動車平沢(ピョンテク)工場 [中央フォト]
昨年6月、双龍(サンヨン)車は平沢(ピョンテク)工場に自動車担当記者を招いて「チボリ」「コランド」生産工程を公開した。大株主のインドのマヒンドラが「双龍車株を売却する」と発表した直後だった。数百台のロボットのアームが忙しく動く生産ラインの前で、双龍車は「まだ死んでいない」と強調するようだった。しかし油で汚れたロボットのアームを見た記者らの間では、むしろ「気の毒だ」という反応が出てきた。テスラの最先端ギガファクトリーなどとは対照的に1979年に設立された平沢工場の老朽化は隠せなかった。
双龍車をはじめ、韓国GM、ルノーサムスンなど外国系資本が投入された自動車3社では年初から危機感が高まっている。双龍車が先月、企業回生手続き(法定管理)を申請したのに続き、今月からルノーサムスンは8年ぶりとなる全職員対象の「希望退職」を進めている。最近集計された3社の自動車生産は5年前に比べて半分近く減少した。
自動車業界は3社の危機について、過去10年間、新しいものを開発できず、過去のものばかりが残っているためだと要約した。世界の自動車企業は2021年を「電気自動車大戦」の前哨戦としているが、外資系3社は電気自動車など変化に対応する武器がない。また、自動車業界が未来のビジョンで集中投資中の「モビリティー(Mobility、移動性)」にも対応どころか、今現在を持ちこたえるのが精一杯だ。
双龍車が最も厳しい状況を迎えている。望みをかけた売却がひとまず水の泡となった。業界によると、双龍車と大株主のマヒンドラ、産業銀行、そして双龍車買収候補の米国自動車流通企業HAAHホールディングスは14日から22日までソウルで数回会い、双龍車売却に関する交渉を行った。しかし終盤にマヒンドラが「追加条件」を要求し、状況が変わった。マヒンドラは双龍車株をすべて売却することを望む一方、産業銀行・HAAHは一定期間は株式を保有して責任を果たすべきだと主張した。
買収者・債権団の立場では後に出てくる可能性がある負債などを憂慮して「食い逃げ」防止策を主張したが、マヒンドラが難色を示したという。もちろん核心は価格だ。HAAHは安く買収することを望み、マヒンドラは10年前に投資した5000億ウォンを最大限回収しようとする。双龍車は来月まで自律構造調整(ARS)を進行中だ。この期間に新しい投資家を誘致して流動性危機から抜け出さなければならないが、HAAHとマヒンドラがどんな交渉結果を出すかは未知数だ。
ルノーサムスンは希望退職プログラムを「サバイバルプラン」と名付けた。誰かが生きるためには誰かが出て行かなければならないという切迫感を帯びている。これに先立ち仏ルノー本社は14日、今後の電気自動車大戦を控え、今年の経営戦略を「ルノーリューション(Renaulution、ルノーと革命の合成語)」と命名した。しかし革命を前に出した本社とは違い、韓国・南米は「収益性中心市場」に指定した。
ルノーサムスンは2012年以降、黒字を出していた優良海外法人だが、昨年は赤字と推定されている。新型コロナ感染拡大の余波で輸出に支障が生じ、昨年3月以降は日産ローグ生産中断の打撃が大きかった。昨年のルノーサムスンの輸出台数は約2万台と、2015年(約14万台)比で約12万台減少した。ルノーサムスンは昨年から小型SUV市場で旋風を起こしたXM3を前に出して輸出を増やしているが、状況を反転させるほどの成果は出せていない。韓国国内で昨年は新車6モデルを出したが、今年は計画がないという点も悩みだ。
韓国GMはすでに構造調整を進めている。2018年に群山(クンサン)工場を閉鎖し、富平(プピョン)第2工場も2023年以降の配分物量がない。富平第1工場の生産台数も減っている。韓国GMは政府が産業銀行を通じて8000億ウォン(約750億円)を支援した外資企業という点で、未来がさらに複雑だ。政府が雇用などを考慮して韓国GMに投資したが、GMはグローバル競争力がないとしていつでも手を引く可能性がある。政府とGMの「崖っぷち交渉」が続いている。昨年、韓国GM労使が「投資撤回」と「部分スト」で対立した当時も、与党関係者の仲裁で収拾された。
産業研究院のチョ・チョル研究委員は「冷静に言えば3社とも独自の生存は難しい。これといった対策がないのが大きな問題」と指摘した。続いて「米国自動車企業の構造調整は詳細に計画を組んで進め、労働組合もその計画の一定部分を受け入れる」とし「そうなってこそ政府が助けることもできる」と話した。3社の過去5年間の生産量は急減した。韓国GM、ルノーサムスン、双龍車の昨年の自動車生産台数は57万台と、2015年(95万台)に比べ40%減少した。この期間の輸出は65万台から31万台に減少した。