SESが年内上場を目前にしているという点も現代自動車の投資背景のひとつに挙げられる。バッテリースタートアップのうち世界の自動車メーカーから1億ドル以上の投資を受けたのはSESと、フォルクスワーゲンと提携したクアンタムスケープだけだ。昨年9月に時価総額33億ドルでSPACとの合併方式により上場したクアンタムスケープの時価総額は2日基準108億ドル規模だ。
◇強化される韓米バッテリー同盟
専門家らは今回の投資を契機に韓米バッテリー同盟がさらに強化されると予想した。現在電気自動車の「心臓」として使われるリチウムイオンバッテリー分野で韓国と米国は唇亡歯寒の関係だ。電気自動車業界関係者は「2010年初めにA123というバッテリー先導企業が廃業してから米国はバッテリー製造基盤を確保するのに失敗し、この空白をLGエネルギーソリューション(旧LG化学)など韓国企業が埋めた」と話した。
韓米産業同盟を加速化するまた別の動力は中国との対決だ。自国の需要を基に世界1位のバッテリー供給会社に浮上した中国のCATLはフォルクスワーゲンの有力な合弁会社として議論される。LGエネルギーソリューションがGMと2つのバッテリー生産工場を米国に作ることにし、SKイノベーションが最近フォードと6兆ウォン規模で複数のバッテリー工場を設立することにしたのはこうした動きに対する対抗戦略だ。
投資銀行業界関係者は「現代自動車とGMが次世代バッテリー分野で韓米共同戦線を展開するだろう」と予想する。
現代自動車では2030年に360兆ウォンまで成長する見通しの米国のUAM市場進出に向けた橋頭堡確保という点もSES投資のまた別の効果だ。現代自動車は航空交通としてUAM商用化が米国で最初に開かれるものと判断し、米国にジェネシス・エア・モビリティという会社を設立した。自動車業界関係者は「現代自動車は韓国では水素燃料電池に基づいた物流運送用UAM開発に注力し、電気バッテリーを使ったUAMは2024年に米国で発売するという目標を立てた」と話した。
◇LGなど韓国企業も次世代技術総力戦
現代自動車など自動車メーカーがバッテリー内在化にスピードを出していることから、既存のバッテリーメーカーも対応戦略に総力を挙げている。バッテリーメーカーは概して全固体電池の商用化時期を2030年以降とみている。それまでは既存のリチウムイオンバッテリーの性能を高め、全固体電池に次ぐ効率を出すという戦略だ。ハイニッケルバッテリーがそのうちのひとつだ。バッテリー正極材素材のひとつであるニッケル含有量を高めるほどバッテリー性能が改善できるという主張に基づいた研究だ。
あるバッテリーメーカー関係者は、「技術を保有することと大量生産することは完全に異なる問題。自動車メーカーがバッテリー技術を内在化しても望む水準の価格で量産するのは難しいだろう」と指摘した。
韓経:「このままでは自動車のうわべ作るだけ」…現代自動車、バッテリーに1億ドル投資(1)