猛暑が変える夏の働き方:「出社」を選ぶ意外な理由と「ねじれ」現象

気象庁の発表によると、今年の6月の月平均気温は統計開始以来最も高くなりました。今後1カ月も全国的に厳しい暑さが続くと予測されています。この記録的な猛暑が、私たちの働き方、特にオフィスへの「出社」に意外な影響を与えている可能性が指摘されています。パーソルキャリアが運営する調査機関、Job総研が実施した最新の調査結果から、夏場の働き方に関する興味深い傾向が見えてきました。

2025年夏の渋谷、記録的猛暑の中を行き交う人々2025年夏の渋谷、記録的猛暑の中を行き交う人々

全体的な出社傾向の継続

Job総研が6月20日に発表した調査結果によると、2025年夏の実際の出社予定者は「出社のみ」「出社多め」「どちらかといえば出社多め」を合わせた「出社派」が74.6%に上りました。これは、新型コロナウイルスが5類に移行した2023年の同調査での68.6%と比較して増加しており、過去2年間で企業側の要請(今回の調査では出社派の77.6%が会社から出社を求められていた)もあり、緩やかながらも出社回帰が進んでいることが分かります。

猛暑と光熱費が「出社」を後押し

興味深いのは、従業員側の意識変化です。「夏の理想の働き方」について、2023年調査ではテレワーク派が6割以上を占めていたのに対し、2025年調査では「出社したい派」が48%、「テレワーク派」が52%と拮抗しました。出社を希望する理由の最多は「涼しい環境が整っている」(39.5%)であり、「テレワークは冷房費がかかる」(22.2%)も上位に挙がりました。

Job総研は、物価高による光熱費高騰の影響もあり、オフィスが単なる職場ではなく「夏の快適な避暑地」や「生活コストを抑える場所」として捉えられる側面が強まっていると分析しています。これが、企業からの出社要請と相まって、出社回帰の動きを少なからず後押ししている可能性が示唆されます。調査では具体的に、「夏は自宅より会社が涼しいから毎日出社する」「テレワークだと電気代が心配なので今年は出社で浮かせたい」「光熱費負担がないならオフィスで冷房を使いたい」「通勤さえ我慢すれば快適なオフィスが待っている」といった声が見られました。

強まる「テレワーク派」と「出社派」の両極化:「ねじれ」現象

一方で、パーソルキャリア・Job総研担当の高木理子氏は「夏は出社とリモート希望の人と二分されている状況」と指摘しています。実際、2023年調査で「必ずテレワークで働きたい」と回答した人は14.9%でしたが、2025年調査で同様の強い希望を示す「とてもテレワークしたい」は24.1%と約10ポイント増加しました。テレワークを希望する主な理由として、「外が暑いから」(67.8%)が最多であり、「通勤による疲労軽減」(60.4%)、「移動による汗対策が面倒」(55.5%)が続きました。

対照的に、「必ず出社して働きたい」と回答した人も、2023年の7%から2025年の「断然出社したい」14.2%へと約2倍に増加しています。これは、「暑さ対策」という同じ理由から、自宅の快適さを求める人と、オフィスの快適さやコストメリットを求める人の間で、働き方に関する希望が二極化し、「ねじれ」現象が生じていることを示しています。

まとめ:複雑化する夏の働き方ニーズ

今回の調査からは、夏場の猛暑と物価高を背景に、働き方に関する人々の意識が複雑化している様子が伺えます。企業からの要請に加え、冷房費節約や快適な環境を求めて出社を選ぶ人が増える一方で、外の暑さや通勤の負担を避けたいという理由でテレワークを強く希望する人も増加しています。同じ「暑さ」という要因が、出社とテレワーク双方への強いニーズを生み出し、夏場の働き方に独特の「ねじれ」現象をもたらしていると言えるでしょう。

参照元

[元の記事へのリンク] (https://news.yahoo.co.jp/articles/a266a85d08cea728c982c6188e150feb13d11b24)
※本記事はJob総研の調査に基づいています。