英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

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英国のFinancial Times紙は27日「次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性がある」と主張したが、次期戦闘機に対する日本の民族主義的な感情論は想像以上に強いと付け加えている。

この戦闘機に関する協議がどれだけの虚勢や国家意識が絡んでいるか、どんなに強調しても足りないほどだ

朝日新聞や日経新聞は今月18日、日本、英国、イタリアの3ヶ国が年内に次期戦闘機の共同開発で正式合意すると報じていたが、この枠組みが成立した背景についてFT紙は「次期戦闘機に対する日本の民族主義的な感情論は想像以上に強く、米国当局との協議は中国の脅威に対抗するため戦闘機を開発するという根本を忘れて『誰が戦闘機を開発するのか?』『誰が開発パートナーであるべきなのか?』という問題にすり替わってしまい、開発した技術の主権を重視する日本が英国との協力を選択した」と明かしている。

英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

出典:public domain

戦後日本の安全保障は米国の軍事力や軍事技術にほぼ依存してきたが、第二次大戦時に名を轟かせた「零戦」に匹敵する戦闘機の独自開発を夢見ており、1980年代後半にF-1の後継機=F-2を独自開発しようとしたが貿易摩擦の問題を背景にした米国側の圧力で計画が潰され、日米共同でF-16ベースのF-2を開発することになった。

そのため防衛当局者はF-2の後継機=次期戦闘機に国産設計の採用を主張、さらに米国依存を減らすため英国との協力を模索していたにも関わらず、日本はトランプ政権の圧力を受けて次期戦闘機の共同開発パートナーにロッキード・マーティンを選択してしまったが、日本と協力範囲について協議した関係者は「F-22やF-35に使用された技術を次期戦闘機に使用するのではないかと日本側の懸念(国産技術の採用制限やソースコードへのアクセス拒否によるブラックボックス化した次期戦闘機が出来上がることを拒否)により交渉は行き詰まった」と明かしているのが興味深い。

英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

出展:航空自衛隊

最先端技術を独占する米国のやり方に不満をもつのは日本だけではなく、国際戦略研究所の関係者も「軍事技術に対するアクセスは米国と同盟国の間で常に問題になってきた。米国の立場から言えば何十億ドルも投資した技術に同盟国がフルアクセスすることを望まないのは理解できるが、逆に同盟国からすればフラストレーションが溜まる」と言及しているが、日本の場合は「ここに民族主義的な感情論が加わる」とFT紙は指摘。

米海軍の元上級将校は日本の次期戦闘機を巡る交渉について「この戦闘機に関する協議がどれだけの虚勢や国家意識が絡んでいるか、どんなに強調しても足りないほどだ」と証言、さらに日本当局との協議に直接関与した米企業の関係者は「(日本との協議中に)この戦闘機を何故作るのかという根本的な理由を忘れているように見えることがあったし、強化された中国軍の脅威に対抗するための装備が必要だという考えが抜け落ちていた。ただ『誰が戦闘機を開発するのか?』『誰が開発パートナーであるべきなのか?』という問題にすり替わってしまった」と述べている。

英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

出典:財務省 令和2年度防衛関係予算のポイント

つまり日本の防衛当局者にとって次期戦闘機の開発は過去の遺恨を晴らす側面が強く、日米の政治的合意を覆しても戦闘機を構成する技術主権を取り戻したかったのだろう。

英伊との協力は米国との協力と比較して自由度の面で優れていても「国際共同開発」特有の問題に直面する可能性がある

まだ日本、英国、イタリアは次期戦闘機の共同開発で正式合意した訳では無いが、日本の次期戦闘機と英国のテンペストプログラムを統合するには幾つか乗り越えるべき問題が残っているとFT紙は指摘しており、①具体的には日本と英国が要求する戦闘機のサイズが異なる点、②知的財産権や輸出規制を巡る問題が未解決な点、③開発費用の分担比率が合意に至っていない点、④日本に米英に匹敵するセキュリティ審査システムがない点だ。

英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

出典:BAE Systems テンペスト

①と②の問題は答えについて言及されていないためスルーするが、開発費用の分担比率が合意に至っていない点についてFT紙は「日本と英国は開発費用の削減を迫られているためイタリアに出資額の増額を求めているが、巨額な開発コストを加味するとイタリアの出資額を増額するというアイデアは苦戦するかもしれない」と述べ、日本に米英に匹敵するセキュリティ審査システムがない点についても「日本に完全な情報公開が出来るか英防衛産業界は疑問視している」と言及している。

米英が完備するセキュリティ審査システムとは「機密情報にアクセスできる人間の調査や資格制度」のことで、防衛産業界で機密性の高い研究や開発に従事する人間はこの審査をパスして資格を得る必要があるのだが、これに匹敵する審査システムが日本にないため「開発した技術情報へのフルアクセスを認められない=日本の開発環境はスパイや不正を働くものが混入しやすい」という意味だ。

英メディア、次期戦闘機の共同開発は新たな日英同盟に発展する可能性も

出典:Tiraden/CC BY-SA 4.0 FCASと無人機ののモックアップ

FT紙は他にも色々言及しているが、個人的に気になったのは「英国と協力することで日本は戦闘機を自由にアップグレードすることができるようになる。このような共同開発は前例のないことだが失敗するということはありえない」と元統合幕僚長の河野克俊氏が述べている点で、英伊との協力は米国との協力と比較して自由度の面で優れていても「国際共同開発」特有の問題に直面する可能性があるため、必ずしもバラ色の未来が約束されている訳ではないと思っている。

日本、英国、イタリア、年内に次期戦闘機の共同開発で正式合意か

 

※アイキャッチ画像の出典:BAE

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