全国農業協同組合連合会(JA全農)は9日、落札した政府備蓄米約19万9000トンのうち、8日時点で32%(約6万3000トン)を卸売業者に出荷したと発表した。前回1日時点では29%だった。備蓄米を巡っては流通の遅れなどから品薄感の解消に至っておらず、コメ価格の値上がりが続いている。
JA全農によると、落札した全量について卸売業者との契約を完了。7月までに70%(約14万トン)の出荷が決まっているが、残り3割は出荷のめどが立っていない。めどが立たない理由について、JA全農の広報担当者は「卸売業者と小売業者が立てる販売計画にコメの出荷が間に合わなかったり、(卸売業者が多忙なため)作業のキャパシティーに達したりした可能性もある」としている。
農林水産省の調査では、スーパーのコメの全国平均価格(4月21~27日)は5キロ当たり4233円(税込み)。前年同期の約2倍、17週連続で上昇している。江藤拓農相は9日の閣議後記者会見で「備蓄米は国民の財産。それを放出したにもかかわらず、今の段階では期待された結果が出ていないことは申し訳ない」と陳謝した。
JA全農から卸売業者に備蓄米を出荷する場合、通常と異なる事務手続きが必要なうえ、新たに輸送用のトラックなどを確保する必要がある。そのため卸売業者が出荷を依頼してから小売店の店頭などに並ぶまでに2~3週間かかるという。農水省は今月2日、JA全農に迅速に供給を進めるよう求めている。【渡辺暢、杉山雄飛】