FMH株主総会迫る:日枝久氏の影と燻る火種

フジテレビの親会社であるフジ・メディア・ホールディングス(FMH)の株主総会が6月25日に開催されるのを前に、メディア業界内外の注目が集まっている。今回の株主総会では、FMH側が提案する取締役候補の中に、両社の前取締役相談役を務めた日枝久氏(87)の影響が感じられる人物が含まれているとの見方が出ている。さらに、FMHやフジテレビを巡っては、中居正広氏(52)と第三者委員会との対立、前社長である港浩一氏(73)らに対するフジテレビからの損害賠償請求問題など、複数の火種が未だ燻っている状況だ。

フジ・メディア・ホールディングスの株主総会が迫るフジテレビ本社ビル外観フジ・メディア・ホールディングスの株主総会が迫るフジテレビ本社ビル外観

FMHが株主総会で承認を求める取締役候補は計11人。このうち6人が社外取締役として名を連ねている。その中には、伊藤忠商事出身で現在セルソース代表取締役を務める澤田貴司氏(67)の名前がある。澤田氏はビジネス界で手腕を高く評価されており、伊藤忠商事の岡藤正広会長(75)からも信頼されていた人物だ。通常、他社で実績を上げた人材を招聘する際は、その出身企業のトップに話を通すのがビジネス界の慣例とされる。FMHも岡藤会長側の了解を得た上で澤田氏を候補としたと考えられる。

岡藤会長と日枝氏は個人的に親しい関係にある。このため、フジテレビ内部では「取締役候補の選定において、日枝氏が伊藤忠商事に根回しを行ったのではないか」との推測が囁かれている。そもそも、フジテレビは日枝氏が30年以上にわたりトップとして君臨し、対外的な折衝を一手に引き受けてきた経緯があり、結果として外部との幅広い人脈を持つ人材が局内に少ないとされる。取締役候補の人選における日枝氏の暗躍が社内で取り沙汰される背景には、本人が現在の状況について一切の沈黙を保ち、その真意が全く不明であることも影響している。日枝氏は2月中旬に腰椎を骨折して以来、公の場で一言も発していない。骨折に関する説明も、当時のFMH社長であった金光修氏(70)が簡潔に行ったのみで、3月末の退任時も沈黙を貫いた。

前出のフジテレビ幹部からは、「日枝氏が沈黙を続けていることが、スポンサーが以前のように戻らない理由の一つとなっている。人権軽視と批判された社内風土を作り出し、多くのスポンサーに迷惑をかけた張本人が、釈明も謝罪もしないのは理解しがたい」との批判が出ている。しかし、このような状況を許容しているFMHとフジテレビ側にも責任があるとの声も聞かれる。フジテレビの営業担当者がスポンサーに対し、「全ては日枝が悪かったのです」と謝罪して回っているとの話もあるが、もしそうであるならば、本人に直接謝罪のメッセージを出させるべきだという意見もある。

政治家である橋下徹氏(55)とフジテレビの関係が深まった背景にも、日枝氏の存在があった。両者の間を取り持ったのは、共通の知人であった故・石原慎太郎元都知事だとされている。橋下氏は現在、フジテレビ系列の報道番組「日曜報道 THE PRIME」(毎週日曜日午前7時30分)のMCを務めている。その一方で、第三者委員会との間で攻防を繰り広げている中居正広氏にとっては、強力な擁護者となっている。

中居氏が自身の弁護団を通じて、第三者委員会に対し証拠の開示や詳細な説明を求める申し入れ書を送付したのが5月12日だった。そのわずか2日後の5月14日には、FMHが筆頭株主であり、フジテレビ系列の関西テレビが制作するワイドショー「旬感LIVE とれたてっ!」に橋下氏が出演し、この第三者委員会問題を巡る中居氏の件に言及した。橋下氏は、中居氏による元女性アナウンサーへの行為そのものについては、「(女性アナの)意に反していた」「女性の心を傷つけた」としながらも、第三者委員会がその行為を「性暴力」と認定したことなどに対しては、極めて厳しい言葉で批判を展開した。

来る株主総会を前に、フジテレビおよびFMHは依然として複数の問題を抱えており、日枝氏の影響力や、過去の問題に対する説明責任の所在などが引き続き焦点となっている。

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