長野県の病院、主食のコメ確保に苦慮 価格高騰・供給不安定で

日本の病院において、患者の治療に欠かせない食事の中でも、主食であるコメの確保が困難になっています。特に長野県では、価格高騰と供給不安定により、病院食に必要なコメの調達に苦慮する状況が深刻化しています。これは、高齢者や嚥下能力が低下した患者にとって重要なエネルギー源であり、おかゆなどに加工しやすいコメが、パンやパスタに比べ塩分も少なく代替が難しいためです。

コメ調達に苦慮する長野県飯田市立病院の外観コメ調達に苦慮する長野県飯田市立病院の外観

主食用米の供給不安定が病院を直撃

主食用米の全国的な品薄に伴う価格高騰が、病院が必要とする大量のコメの安定的な仕入れを困難にしています。これまで米穀卸業者からの供給に頼ってきた多くの病院で、その供給が細くなっている状況です。長野県飯田市にある飯田市立病院は、年間約12トンのコメを使用しており、半期ごとに約6トンの納入業者を指名競争入札で決めていました。例年3~4社が応札していましたが、今年3月の入札は供給不安を背景に初めて応札ゼロとなりました。

職員による小売店での仕入れとコスト増加

入札不調を受け、飯田市立病院では4月以降、職員が市内の小売店へ週2回、乗用車で出向き、市販の5キロ袋を一度に25袋(計125キログラム)購入するという異例の対応を取っています。この職員による仕入れは、手間がかかるだけでなく、購入価格が昨年同時期の2倍を超えており、コストの増加も大きな負担となっています。市内の卸売業者との随意契約により、7月には一時的に納入が見込める状況ですが、これも2カ月限定の予定で、9月以降の安定供給の目途は全く立っていません。新米の時期に期待がかかりますが、今後の作柄次第では楽観視できない状況です。同病院栄養課は、一日約750食を提供する中で「どんな形であっても数量確保に必死だが、いつまで持つか不安。供給安定を強く願う」と現状の厳しさを訴えています。

病院食のコメを丁寧に盛り付ける栄養課スタッフ病院食のコメを丁寧に盛り付ける栄養課スタッフ

提供量見直しで対応する病院も

同様に飯田市内の健和会病院でも、系列施設分を含め一日約600食を提供しており、コメ不足の影響を受けています。同病院栄養課では、医師の指導の下、4月からご飯の提供量を見直しました。これは、もともと多めに提供しており食べ残しが多かった実態を踏まえたもので、必要な栄養量を損なわない範囲で、原則1食200グラムだった量を150グラムに変更しました。石川雅亮科長は「備蓄米で安定するかと思っていたが、そうはなっていない」とため息交じりに語っています。

患者の栄養と病院経営への懸念

これらの例は、長野県内の多くの病院が直面しているコメ調達の課題を浮き彫りにしています。病院食の質と安定供給は、患者の回復に直結する重要な要素です。供給の不安定さが続けば、食事内容への影響や、高騰するコストによる病院経営へのさらなる圧迫が懸念されます。

まとめ

長野県の病院は現在、主食用米の価格高騰と供給不足という二重苦に直面しており、その影響は病院食の安定的な提供を脅かしています。職員による小売店での購入や、提供量の見直しといった一時的な対策に頼らざるを得ない状況が続いており、早期の市場供給安定化が強く待たれています。

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