参院選大阪、自民候補決定までの曲折と刷新への課題

7月3日公示、20日投開票が見込まれる参院選で、全国唯一自民党の候補予定者が未定だった大阪選挙区(改選数4)の構図が固まった。公認を巡り自民党大阪府連と党本部が対立する異例の展開の後、現職の太田房江氏の出馬見送りに伴い、緊急公募を実施。応募者66人の中から柳本顕元衆院議員の公認が決定した。出遅れを取り戻すため知名度を重視した選択だが、有権者が求める「刷新感」に乏しく、府連は柳本氏のイメージアップに腐心している。

候補者選定の混迷

「府連会長になって半年。これほどドロドロの膿はない。日本をどうするかというのが(国会議員の)使命なのに、諍いの話ばかり。(公募による公認決定は)小さな最初の一歩だ」と、自民党大阪府連の青山繁晴会長は5月16日の記者会見で、候補者決定に至るまでの府連内の混乱ぶりを赤裸々に語った。緊急公募の期間は5月29日~6月4日と選挙直前の実施となったが、実は公募そのものは、府連内では早い段階から「既定路線」とされていた。

前職・太田氏の状況と公募の背景

公募実施の強い動機となったのは、平成31年参院選で現職の太田氏が55万9千票余りを得ながら改選数4の最下位で当選した「衝撃」だ。上位3候補が日本維新の会と公明党だったこともあり、自民党の地方議員からは「2位で通ると思っていた。4位は信じられなかった」との声が上がった。さらに追い打ちをかけたのが、令和3年と昨年の衆院選での府内15小選挙区における維新候補への全敗だ。

自民府連関係者によると、太田氏の政治資金収支報告書における派閥パーティー収入の不記載問題も重なり、「このままでは参院選も惨敗する」との強い危機感が募った。府連は昨年12月の青山会長就任前に公募実施を決定。現職も申請可能な公募に対し、府連内では「会長がのけぞるほど(太田氏公認に)反対の声が強かった」といい、青山会長は党本部に公募実施を申し入れた。

緊急公募と柳本氏の決定

しかし、党本部は「現職優先」の姿勢を崩さず、公募には消極的だった。一方、出馬意欲を示す太田氏は、地方議員らへの挨拶回りを精力的に行い、今年4月の府連役員連絡会では、これが公認が内定しているかのような振る舞いに見えるとして批判が噴出した。出席者によると、太田氏は政治活動の一環と釈明したが、府連が公募を求める状況下での言動に不満と困惑が広がった。

転機は5月中旬に訪れた。党本部が太田氏の公認を内定した直後、週刊誌が太田氏に関する新たな疑惑を報じた。これに加え、太田氏自身が「いわれなき誹謗中傷でストレス障害と診断された」として不出馬を表明したことが、緊急公募へとつながった。最終的に、党本部は66人の応募者から柳本顕元衆院議員の公認を決定した。

自民党大阪府連の青山繁晴会長(中央)が記者会見で参院選大阪選挙区の公認候補決定について説明(2024年5月11日、大阪市)自民党大阪府連の青山繁晴会長(中央)が記者会見で参院選大阪選挙区の公認候補決定について説明(2024年5月11日、大阪市)

刷新感への課題と府連の戦略

緊急公募を経て柳本氏の公認が決定したものの、府連内には「刷新感に乏しい」との声も上がっている。そのため、府連は柳本氏のイメージを一新し、有権者への浸透を図るための戦略に懸命に取り組んでいる。今回の候補者選定の混乱は、自民党が大阪で直面する厳しい状況と、内部の根深い対立構造を改めて浮き彫りにした形だ。投開票日まで残りわずかとなる中、自民党が大阪で議席を維持できるか、厳しい戦いが続いている。

[参考資料]