慰安婦に関する発言が、元慰安婦らに対する名誉毀損(きそん)罪に問われたものの、韓国最高裁で「無罪」が確定した韓国・延世(ヨンセ)大学の元教授、柳錫春(リュ・ソクチュン)氏が、産経新聞の取材に応じた。韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領は過去に数々の反日発言をしていたが、現在は封印している。柳氏は、李氏が支持層から批判されて「自分の過去の言葉と戦うことになるだろう」と話した。
【写真】握手する石破首相と韓国の李在明大統領 笑顔の李氏に対し…
柳氏は2019年9月、大学の講義で慰安婦問題について「(慰安婦は)売春の一種だ」などと述べた。これに対し、元慰安婦支援団体「韓国挺身(ていしん)隊問題対策協議会(挺対協、日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯=正義連の前身)」が告訴し、検察が柳氏を在宅起訴。1審は、憲法が保障する「学問の自由」を強調し、柳氏の元慰安婦に関する発言について無罪を言い渡し、今年2月に無罪が確定した。
21日に東京都千代田区で開かれた歴史認識問題研究会(西岡力会長)の公開研究会で、柳氏は裁判の過程を詳細に証言。会終了後に産経新聞の取材に応えた。
■過去には「日本は敵性国家」発言
今月、大統領に就任した李氏について、柳氏は「イデオロギーをもって自分なりの歴史観を確立させている人ではない。そのことについて深く言及したこともない。彼は学生運動の中心的な役割を果たしたこともない」と語った。
李氏は過去、日本について「敵性国家」などと発言。慰安婦問題についても「日本の真摯(しんし)な謝罪と反省」を求めるなど強硬姿勢で知られてきたが、大統領選では一転し、「日本はパートナー」と訴えてきた。
現在は「反日発言」を封印している李氏について、柳氏は「これまでは学生運動家たちの論理をそのままおうむ返しにして支持を集めてきた。しかし、大統領になって国際情勢を見て『このままいったら韓国は中国に食われてしまうかもしれない』ということを認識する中で、日本との関係を良くしなければならないと分かったのではないか。歴史問題を持ち出して日韓関係を悪くする必要はないと考えていると思う」と指摘した。
今後は「支持層から『過去に言っていたことと違うじゃないか』と攻撃されることになるだろう。それが李氏のジレンマで、過去の自分の言葉と戦わなければならない。そこで政治的危機になる可能性がある」と話した。