6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙は、23日未明に全議席が確定し、都議会に新たな構図が生まれることとなりました。長らく都議会第1党を維持してきた自民党が過去最低の獲得議席数に沈む一方、国民民主党や参政党といった新興勢力が議席を獲得し、存在感を示しました。
今回の都議選では、自民党が21議席にとどまり、2017年の23議席を下回る過去最低の結果となりました。公明党も前回より4議席減の19議席となり、9回連続の全員当選はなりませんでした。しかし、小池百合子知事が特別顧問を務める都民ファーストの会が31議席を獲得し、これら3党による「知事与党」は過半数を維持しました。野党に目を向けると、立憲民主党が2議席増の17議席を獲得したほか、国民民主党が9議席、参政党が3議席を獲得するなど、新しい顔ぶれが都議会に加わることとなりました。国政政党は、来月に行われる参議院選挙の前哨戦と位置付け、党首クラスが応援演説に入るなど、選挙戦は熱を帯びて展開されました。
自民党と並んで最多の42人の候補者を擁立しながらも、全員が落選という厳しい結果に終わったのが、地域政党「再生の道」です。同党を率いるのは、昨年7月の都知事選で小池氏に次ぐ2位となり、「旋風」を巻き起こした元安芸高田市長の石丸伸二氏(42)です。都知事選での勢いを背景に、石丸氏は今年1月に「再生の道」を設立しました。党としての政策を掲げず、各候補者が独自に主張を行うという異例の方針や、公募で集まった1128人から候補者を選ぶ「オーディション」をYouTubeで配信するなど、選挙前からインターネットを活用して注目を集めていました。
しかし、公示日初日の6月13日、大手町のオフィス街で行われた石丸氏の応援演説には、平日昼間ということもあり、数十人程度の聴衆しか集まらず、静かなスタートとなりました。その後、石丸氏は各地で積極的にマイクを握り、熱心に聞き入る支持者も多く見られましたが、昨年の都知事選で見られたような熱狂的な雰囲気は影を潜め、初陣は全員落選という結果に終わりました。
東京都議選に立候補した「再生の道」を率いる石丸伸二氏の街頭演説風景。支持者が耳を傾けている。
都議選の開票が進む中、NHKの『東京都議会議員選挙開票速報 2025』に生出演した石丸氏の発言が注目されました。昨年の都知事選後の各局の選挙特番では、コメンテーターの「勉強不足」を指摘するなど、強気の姿勢が話題となりましたが、今回はどうでしょうか。
番組MCの糸井羊司アナウンサーから「現時点で獲得議席はゼロ。その現状をどのように受け止めているか」と問われた石丸氏は、「昨年の都知事選の際にもお伝えしましたが、選挙の結果はあくまでも都民の意識が可視化されたものです。それ以上でも、それ以下でもない」と答えました。
さらに、「なぜ十分に有権者の支持を得られていないと考えるか」という質問に対しても、「何をもって十分かというのは決めていないので、『再生の道』を作ったそもそもは、そういうところに重きを置いていないんです。目的としては、広く国民の政治参加を促す。都議選に候補者を擁立するとしっかり定めています。その意味において、『再生の道』としては、やるべきことはできたと評価しています」と、前回と同様に自身のスタンスを崩しませんでした。
また、都庁担当のNHK記者から参議院選挙に向けた戦い方に関する質問が出ると、石丸氏は「今日の夕方のニュースでNHKが『各党が参院選の前哨戦として都議選を捉えている』という報道をされましたが、すさまじく違和感を覚えていました」と強く反論した上で、「その党があるのであれば、どこの政党か示していただきたいですし、仮に本当にそう言っていたとしても、NHKともあろう局がそのような表現をすべきではないと、まず、改めて強く批判しておきます。国政は国政、地方議会とは全く別物ですので。『再生の道』としても、参院選に向けては個別のテーマを掲げて臨んでいます」と述べ、NHKの報道姿勢を批判しました。
この石丸氏からの直接的な批判に対し、スタジオから反論があるかと思われましたが、糸井アナウンサーは静かに「はい。石丸さんありがとうございました」と述べるにとどまり、中継は終了しました。昨年の都知事選後のような、石丸氏とスタジオとの間で舌戦が繰り広げられることはありませんでした。
石丸氏のNHKへの「噛みつき」を、NHK側があっさりと受け流した形となり、X(旧Twitter)上では「石丸伸二NHKの中継でNHK批判してドヤ顔してたけどハイありがとうございましたーって切られてて面白かった」「石丸伸二が一所懸命NHKに噛み付いてるのにアナウンサーに華麗にスルーされるのいいな 正しい取り扱い方法だと思う」「NHKでイキリまくっている石丸伸二、見ていて恥ずかしくなるな」といった苦笑や冷ややかな反応が多く見られました。
今回の都議選後には、昨年のような「石丸旋風」が再び巻き起こる兆候は見られないようです。