たつき諒氏のコミック『私が見た未来』がミリオンセラーとなり、「7月5日に大変な災害が起きる」という予知夢の内容が広く拡散、インバウンド観光にまで影響が出ている状況は既報の通りです。この社会現象について、6月15日放送のテレビ番組「Mr.サンデー」(フジテレビ系)も取り上げ、その広まりの背景や騒動の本質をレポートしました。しかし、デマや風評問題に焦点を当てるべき番組の報道内容には、一部ファクトと異なる点が見受けられました。
「私が見た未来 完全版」の書籍カバー画像、たつき諒氏の著書、予言ブームを示す視覚資料。
「Mr.サンデー」が報じた予言騒動のポイント
番組が挙げた『私が見た未来』を巡る騒動の主なポイントは以下の通りです。
- 『私が見た未来』の予言とは別に、香港には「4月以降、日本に悪いことが起きる」と予言する風水師が存在した。
- これらの予言を現地のユーチューバーが紹介したことで、香港などで「日本は危ない」という説が広まった。
- こうした予言騒動は今回が初めてではない。かつて『ノストラダムスの大予言』(五島勉氏著)がベストセラーになった際、日本中が恐怖に震えた歴史がある。
- 当時、「どうせ世界が滅びるなら」と結婚や出産を諦めた女性が現れたとされる。
- 1999年が迫る中、当時の日本人は本気で世界の終末を心配していた(番組内街頭インタビュー)。
『私が見た未来』に描かれた、日本列島が大津波に飲み込まれる予言の描写イメージ。
ノストラダムス予言騒動、1999年の実際の空気感
上記ポイントのうち、(1)と(2)については事実に基づいた報道と言えるでしょう。しかし、(3)以降、特にノストラダムスの大予言に対する当時の日本人の反応に関する描写には、疑問符が付きます。番組を見た視聴者の多くは、「当時の日本人はノストラダムスの予言を本気で信じて恐怖していた」という印象を持ったかもしれません。当時を知らない世代にとっては、そう感じても無理はない構成でした。
しかし実際のところ、21世紀への移行期にあった当時の日本社会は、番組が描くほど単純ではありませんでした。『ノストラダムスの大予言』で示されたとされる「1999年」の段階では、既に多くの人々にとってこの予言は、真剣に恐れる対象というよりは、一種の「ネタ」、あるいはサブカルチャー的な扱いとなっていました。
むろん、予言を文字通り信じ込み、強い不安を抱えていた人々が一定数存在したことは事実です。しかし、社会全体として、あるいは良識ある大多数の日本人という視点で見れば、「半信半疑」というのが正直なスタンスだったと言えるでしょう。「世界の終末を本気で心配し、結婚や出産を諦める女性が続出した」という番組の描写は、当時の多様な社会の空気感を捉えきれておらず、いささかオーバーな表現だったと言わざるを得ません。
まとめ
『私が見た未来』予言騒動は、現代の情報拡散の速さを示す一方、インバウンドへの影響など現実的な問題も引き起こしています。デマ対策や風評被害への対応が求められる中、メディアによる報道のあり方も重要です。「Mr.サンデー」のように過去の事例を引き合いに出す際は、当時の社会心理を正確に伝える難しさがあります。この騒動は、メディア報道の責任と、情報を受け取る側のリテラシーの重要性を改めて問いかけています。