自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を巡り、清和政策研究会(旧安倍派)からのパーティー券収入不記載で政治資金規正法違反の疑いで刑事告発され、不起訴処分(起訴猶予)となっていた萩生田光一元政調会長の当時の秘書について、東京第5検察審査会が「起訴相当」とする議決を出したことが明らかになりました。告発した神戸学院大の上脇博之教授が29日に公表しました。この「起訴相当」議決は、今回の裏金事件関連では初めてです。
政治資金裏金事件に関連する萩生田光一元政調会長の写真
議決の内容と意義
東京第5検察審査会による「起訴相当」議決は10日付で行われました。自民党派閥の政治資金裏金事件において、個別の事案に対する「起訴相当」議決が明らかになるのは今回が初めてのことです。議決文では、「このような事案で起訴を見送り続ければ、いつまでたっても虚偽記載はなくならない」と強く指摘されており、政治資金規正法違反に対する検察の判断姿勢に疑問を呈する形となっています。
異例の経過と今後の展望
萩生田氏の元秘書を巡る動きは異例の事態をたどっています。今回の「起訴相当」議決に先立ち、既に別の検察審査会が「不起訴不当」とする議決を出していました。これを受けて、東京地検は今後、元秘書について再捜査を行うかどうか検討するとみられます。もし地検が再び不起訴処分とした場合でも、検察審査会が再度「起訴すべきだ」とする議決(2度目の起訴相当)を出せば、裁判所の指定した弁護士が検察官役となり、強制的に起訴されることになります。
告発容疑と検察審査会の批判
元秘書に対する告発容疑は、2019年から2022年にかけて清和政策研究会から受け取ったとされる2290万円について、萩生田氏が代表を務める政治団体の政治資金収支報告書に記載しなかったというものです。検察審査会の議決では、元秘書が政治資金規正法違反の違法性を認識しながら、萩生田氏に報告を行わず、さらには支出に関する領収書を廃棄した行為が指摘されています。審査会は、これらの行為を「悪質であり、証拠隠滅行為も看過できない」と厳しく批判しました。
萩生田氏本人の処分
一方、政治資金規正法違反の容疑で刑事告発されていた萩生田光一氏本人については、東京地検が容疑不十分として不起訴としていました。これに対し、今回の元秘書と同じ東京第5検察審査会が2024年10月に「不起訴相当」と議決しており、萩生田氏本人の捜査は既に終結しています。この点で、元秘書に対する今回の議決は対照的な結果と言えます。
元秘書を巡る複数の議決の背景
元秘書に対する検察審査会の判断が複数出ている背景には、複雑な経緯があります。東京第5検察審査会は、萩生田氏本人の議決を行った際、元秘書に関する上脇教授からの申し立てを一旦却下していました。その理由として、地検の起訴猶予処分は上脇教授の告発に基づくものではなく、地検の独自捜査によるものだった点を挙げていました。しかしながら、審査会はその後、独自に事件の記録を取り寄せ、元秘書に対して「不起訴不当」とする議決を出していました。これに対し、上脇教授が改めて元秘書を刑事告発しました。東京地検は2024年12月、元秘書に対して2度目となる起訴猶予処分としており、今回の「起訴相当」議決はこの2度目の処分に対するものとなります。
今回の東京第5検察審査会による「起訴相当」議決は、自民党派閥の政治資金裏金事件における個別の立件判断として初めてのものであり、特に萩生田光一元政調会長の元秘書という立場に注目が集まっています。既に本人は不起訴相当となっている中で、元秘書に対する再捜査の可能性が高まり、今後の展開が注視されます。