欧州を覆う記録的熱波:46度観測、各地で健康被害や対策急務に

ヨーロッパの広い地域が記録的な熱波に見舞われており、各国で体調管理に厳重な注意が呼びかけられています。焼け付くような暑さの影響は深刻化しており、特に南欧を中心に猛威を振るっていますが、イギリスでも暑い日が続いています。このヨーロッパの熱波は、各地で健康被害をもたらし、社会インフラにも影響を与えています。

スペインで記録更新、健康被害も

最も暑さが厳しくなっているのはスペイン南部です。スペイン気象当局によると、エル・グラナドという町では28日に気温46度を記録し、6月としては観測史上最高を更新しました。バルセロナでは同日、道路清掃作業を終えた女性が死亡しており、現地当局が死因などを詳しく調べています。

この猛烈な暑さを受け、ポルトガル、イタリア、クロアチアの一部では、最高レベルの「赤」の暑さ警報が発令されています。また、スペイン、フランス、オーストリア、ベルギー、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、ハンガリー、セルビア、スロヴェニア、スイスなど多くの国々でも、次に高いレベルの「オレンジ」の警報が多数出ており、広範囲にわたる厳重な警戒が必要とされています。

各国での対策と健康への影響

イタリアでは、各地の救急部門で熱中症患者が急増していることが報告されています。イタリア救急医学会のマリオ・グアリーノ副会長はAFP通信に対し、「高齢者、がん患者、ホームレスの人々」が主に影響を受けている状況を明らかにしました。これに対応するため、ナポリの病院などでは、熱中症専用の治療経路を設定し、患者に冷水に浸すといった迅速な治療を施せるようにしています。ボローニャでは、エアコンと飲料水を備えたシェルターが7カ所に設置され、ローマでは70歳以上の市民を対象に市営プールが無料開放されるなど、公共の場での対策が進められています。

スペイン・バレンシアの街中で、熱波対策としてミストを浴びて涼む人々スペイン・バレンシアの街中で、熱波対策としてミストを浴びて涼む人々

ポルトガルの首都リスボンの薬剤師はロイター通信の取材に対し、日中の最も暑い時間帯には「外出しないよう」市民に呼びかけられているものの、「すでに熱中症ややけどの事例がみられる」と、現実的な状況を語っています。

熱波はバルカン半島西部の国々にも深刻な影響を及ぼしており、気温が40度を超える地域が広がっています。セルビアでは、19世紀に観測記録を取り始めて以来最も高い気温を記録しました。スロヴェニアも28日、6月の最高気温を更新しており、北マケドニアも27日に42度に達するなど、うだるような暑さとなっています。

イギリスと今後の見通し

イギリスでも連日暑い日が続いており、29日にはロンドンで31度に達しました。国内の一部では30日に最高33度と予想されており、ピークを迎える見込みです。ロンドンでは7月1日にかけてさらに気温が上昇し、34度に達する可能性も指摘されています。

特に7月1日にはテニスのウィンブルドン選手権が開幕する予定であり、史上最も暑い開幕日になることが予想されています。なお、イギリスにおける6月の最高気温記録は、1957年にサウサンプトンのメイフラワー・パークで、1976年にロンドン北部のカムデン・スクエアで記録された35.6度です。

欧州の一部の地域では、今週半ばまで気温が上がり続けるとみられています。フランス、ドイツ、イタリア、イギリスを含む多くの地域で、今後数日間にわたって高温が続く見込みです。この異常な暑さは、広い地域を覆う高気圧によって引き起こされており、乾燥した空気が下降し、地表近くで暖められることが原因とされています。

このような状態が数日間続くことで気温は著しく上昇しました。高気圧は今後数日かけて東へと移動するため、それに伴って高温の地域も北や東へと移ると予測されています。

気候変動との関連

個々の極端な気象現象を直接的に気候変動と結びつけるのは難しい側面もありますが、近年の科学的知見は、熱波が気候変動の影響によって、より発生しやすくなり、かつより激しさを増していることを示唆しています。気候変動が極端な気象現象に及ぼす影響を分析しているワールド・ウェザー・アトリビューションの科学者らは、3日連続で28度を超える6月の熱波が、工業化以前に比べると発生する可能性が約10倍になっているとの分析結果を報告しています。

(c) BBC News