神谷宗幣氏率いる参政党が躍進 東京都議選など地方選で議席獲得、一方過去の「側室」発言に波紋

「国民の生活をどう守るのか! これが“日本人ファースト”の政治なんです!」参政党代表の神谷宗幣参院議員(47)は、6月27日に長野県・松本駅前近くで行われた街頭演説でこのように声を張り上げ、集まった聴衆から拍手喝采を浴びました。2020年の結党以来、国政・地方政治で着実に勢力を拡大してきた参政党が、いま大きな注目を集めています。その背景には、近畿や東海地方での市議選でのトップ当選や、首都東京での選挙における議席獲得といった具体的な成果があります。しかし、こうした党の躍進と並行して、代表である神谷氏の過去の特定の言動が再び取り沙汰され、波紋を広げています。

参政党、地方選挙で存在感を示す

参政党の勢いを象徴するのが、各地の地方選挙での戦績です。特に、6月22日に投開票が行われた東京都議会議員選挙では、いわゆる裏金問題などで逆風にさらされた自民党が歴史的な低迷を見せ、都議会第一党の座を失いました。これにより生まれた保守票の受け皿の一つとして、参政党が台頭した形です。

初挑戦となった今回の都議選で、参政党は4人の候補者を擁立し、激戦区である世田谷区、練馬区、八王子市で合計3議席を獲得しました。これは、既存政党以外に投票行動を移した有権者が少なくなかったことを示唆しています。

また、東京都議選に先立つ6月15日に投開票された兵庫県尼崎市、福井県あわら市、愛知県西尾市の各市議会議員選挙でも、いずれも参政党公認候補者がトップ当選を果たしており、地方レベルでの確かな浸透ぶりがうかがえます。

結党からわずか数年で、参政党は神谷氏を含む4人の国会議員を擁するまでに成長し、地方議員は140人を超えています。さらに、6月28日には日本維新の会を離党した梅村みずほ参院議員が入党したことで、公職選挙法上の政党要件を満たし、これにより今後の選挙活動においてより有利な条件で戦えることになります。来る7月に行われる参議院選挙でも全都道府県に候補者を擁立することを発表しており、「反グローバリズム」や「日本人ファースト」といった独自の政策スローガンを掲げ、さらなる政治的なうねりを起こす可能性が指摘されています。

参政党代表の神谷宗幣氏がマイクを前に街頭演説を行う様子参政党代表の神谷宗幣氏がマイクを前に街頭演説を行う様子

神谷氏の皇位継承に関する過去発言が波紋

参政党の急速な躍進とともに、代表である神谷宗幣氏の過去の発言にも再びスポットライトが当たっています。特に物議を醸しているのが、2023年6月29日に同党のYouTubeチャンネルで公開された「最近問い合わせが多い女系天皇への見解について」と題された動画での発言です。

参政党の公式サイトには、2024年5月17日公開の「安定的な皇位継承の在り方についての考え方」という項目があり、そこには党の基本的な考えが記されています。

《天照大神の御子孫とされる天皇は、神武天皇から続く万世一系の存在として、歴史、伝統、文化を継承し、我が国の象徴であり日本国民統合の象徴として在り続けています。(中略)我が党は、皇位継承については、男系男子による皇統の維持が大切であると考えています。これは、先人たちが、長い歴史を通じて蓄積した慣習や経験に基づく叡智によるものです。126代にも及ぶ長い歴史を通して、血のにじむような努力で紡いできた男系の皇統を、私たちがその歴史や思想を十分に学び考えることなく、ひとときの時代の流れや価値観によって断絶させてはなりません》

これは、日本の皇位は父方の血筋に連なる男子によってのみ継承されるべきであるという、党の「男系男子維持」の方針を明確に示しています。

「側室を置いてたくさん子供を作る」発言とその背景

この党の方針を踏まえ、神谷氏は前述の動画内で「私は今の皇室を維持するため、男系を維持するためには一番やるべきことは、もう“宮家の復活”だと思っております」と提言しました。さらに、その中で議論を呼ぶ以下の“提案”をしています。

「ちょっと賛否両論あると思うんですけど、天皇陛下に側室を、やっぱり持っていただいて。たくさん子供を作っていただくと。昔はそうしていたわけですよね。そういったことも、やるべきなんじゃないかなと。それぐらい思い切ったことを、やるべきなんじゃないかな、というぐらいの考えの持ち主です。」

この発言は、かつて日本の皇室で行われていた側室制度を復活させるべきだという趣旨に受け取られかねない内容でした。神谷氏はその理由について、「皇位継承者、沢山いるじゃないかっていう方、いらっしゃるんですけど、確かに血の繋がった男性の方いらっしゃると思うんですが、天皇のお仕事っていうのは“祭祀”ですから、霊統をちゃんと継いでいかないといけないんですよね。天皇霊っていうのが私はあると思っているので」と述べ、天皇の役割を祭祀と「天皇霊」の継承に重きを置いているとの考えを示しました。

なお、神谷氏によるこの側室に関する発言部分は、現在公開されている当該YouTube動画からはすでに削除されており、編集が加えられたものと見られています。しかし、東京都議選の前後からこの発言箇所を切り抜いた動画がX(旧Twitter)上で拡散しました。昭和天皇の時代に廃止された側室制度の“復活”に言及したことに対し、一部のユーザーからは「いつの時代から来たんだ?この政党」「『保守』を名乗りながら天皇陛下を侮辱してるよね」といった批判的な声が相次ぐ事態となっています。

党側の反応

本件について、週刊誌記者が2024年6月27日に参政党に対し、神谷氏の側室に関する発言が個人の見解なのか、あるいは党の公式な見解(党是)なのか、さらに当該発言部分を動画から削除した経緯について電話で問い合わせたところ、担当者からは「ご回答できません。すみません」との返答があったのみで、詳細な説明は得られませんでした。

まとめ

参政党は地方選挙での連続的な成功と国政政党としての要件達成により、日本の政治シーンで存在感を高めています。特に「日本人ファースト」を掲げた独自の主張は、従来の政治に飽き足らない有権者層に浸透しつつあります。しかし、党代表である神谷宗幣氏の過去の皇位継承、特に側室制度に触れた発言は、その歴史的背景と現代社会における価値観との乖離から、ネット上を中心に厳しい批判にさらされています。党側がこの発言について明確な説明を避ける姿勢を見せる中で、参政党の今後の動向と共に、過去のリーダーシップに関する言動がどのように受け止められていくのか、引き続き注目が集まっています。