トランプ政権下の米国造船業:復活の主張と停滞の現実

トランプ前米大統領は「造船業復活」を掲げたものの、その再建に向けた政策推進が停滞しているとの分析が出ています。特に、米国造船業を取り巻く状況は複雑です。ウォール・ストリート・ジャーナル紙は最近、ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)傘下に新設された造船担当事務局の人員が、設立当初の7人から最近2人にまで削減されたと報じました。トランプ前大統領は今年3月に造船業再建計画を取りまとめるため同事務局を設置しましたが、まだ十分に機能していないと分析されています。同紙は、トランプ前大統領と政策指向が異なる人物に対する大規模な人事異動の中で、造船事務局が縮小されたと説明しています。

政策推進の停滞と政策間の衝突

米国造船業再建に向けた政策推進の停滞は、他の政策との衝突によっても引き起こされています。トランプ政権は最近、米国の対外援助政策を担ってきた国際開発局(USAID)を廃止し、食料援助政策を縮小しました。これにより、米国の海運業界が打撃を受けている現状があります。韓国造船業界の関係者によると、米国の海運会社はUSAIDの食料支援輸送を請け負うことで安定した収益を上げてきましたが、この政策変更により、船舶の運航停止や従業員の削減を余儀なくされる可能性が出てきています。

ミシシッピ州インガルス造船所での米国船舶建造の様子ミシシッピ州インガルス造船所での米国船舶建造の様子

ジョーンズ法と規制の壁

船舶に関する規制廃止に向けた動きも、最近は進んでいない状況です。米連邦議会では、ジョーンズ法を廃止する内容の法案が提出されていますが、その通過は不透明なままです。ジョーンズ法は、米国内の港湾間を航行する商船について、米国で建造されたものであることを義務付けています。米連邦議会ではこれまで何度もこの規制を廃止しようと試みましたが、造船業界の強い反発や地域の利害関係との衝突により、いずれも失敗に終わっています。韓国輸出入銀行のヤン・ジョンソ首席研究員は、「韓国の造船業界が米国の船舶建造市場に参入するためには、ジョーンズ法をはじめとする様々な規制が解除される必要がありますが、関連する議論が進んでいない状況です」と指摘しています。

施設・人材確保の課題

このような状況の中、米国での船舶インフラ確保に乗り出した韓国の造船業界は、既存施設の整備に苦慮しています。ハンファオーシャンが昨年12月に買収した米フィラデルフィアのフィリー造船所には2つのドックがありますが、そのうち1つは数年間放置されており、老朽化が進んでいるとされています。さらに、現地での熟練した人材の確保も大きな課題です。米海軍に納入する軍艦は防衛産業物資に指定されており、米国市民権を持つ現地の人材のみが建造に携わることができます。ある造船会社の役員は、「現地で人材を採用しても、辞めてしまう人が多く、退社率が100%に達することもあります。加えて、彼らの熟練度はそれほど高くなく、薬物使用など様々な問題が絶えません」と現場の厳しい状況を語っています。

これらの要因から、米国造船業の本格的な復活には依然として大きな課題が山積しています。ソウル大学のキム・ヨンファン教授は、「米国との造船業協力が韓国に大きな機会であることは明らかですが、1日で進展するという期待は神話に近い」と指摘し、長期的な視点でのパートナーシップ構築の重要性を強調しています。

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