梅雨入りが発表された直後から、全国各地で最高気温が30℃を超える真夏日が続き、西日本の一部では観測上もっとも早い梅雨明けが発表された。急激な気温上昇は、熱中症の発症リスクが高まる危険な気候であり、対策が急務。しかし、熱中症予防策の中には、実は効果が薄いものもあるという。(清談社 真島加代)
● 体が暑さに慣れていない 梅雨前後こそ要注意
年々過酷さを増す日本の夏。湿度の高さだけでなく、最高気温が40℃近くに達する地域も多く、心配なのが熱中症だろう。新百合ヶ丘総合病院救急センターでセンター長を務める伊藤敏孝氏に、これからの季節の熱中症対策について話を聞いた。
「人の体は、体温が上昇すると発汗し、その汗が蒸発する際に発生する気化熱で熱を体の外に逃がして体温を一定に保っています。しかし、高温多湿の環境に長時間いると、大量の汗とともに体から水分と塩分が失われて脱水症状を起こし、体温調節が難しくなってしまうのです。熱中症と聞くと、真夏に発症するイメージが強いかもしれませんが、体が暑さに慣れていない今の時期こそ注意が必要です」
気温32℃で湿度40%の環境と、気温28℃で湿度80%の環境における熱中症リスクは同程度。湿度が高いと汗が蒸発しにくく、体に熱がこもってしまい、熱中症につながりやすいという。
「熱中症になりやすいのは、屋外でスポーツや長時間の作業をする人です。また、体温調節が苦手な小さなお子さんや、加齢により暑さを感じにくくなっている高齢者も熱中症リスクが高い。最近は夜間の冷房使用も勧められていますが、いまだに『クーラーは体に悪い』などの理由で冷房を使わず、熱中症を発症する高齢の患者さんもいます。しかし、冷房を使わないほうがかえって健康に悪影響を及ぼすので、そうした方が身近にいる場合は周囲の方も注意を払いましょう」
また、伊藤氏は「朝食を抜きがちな人」にも熱中症の危険があると指摘する。朝食をとらずに家を出て、通勤途中で体調を崩すケースが多いとのこと。