ロシア、3年間で500億ドル資産没収:ウクライナ戦争下の経済変貌

ロシア当局が過去3年間に約500億ドル相当の資産を没収したとの調査結果が公表された。これはウクライナ戦争が続く中でロシア経済モデル転換が進んでいることを示すものだ。戦争や対ロ制裁の影響により、多くの西側企業がロシアから撤退し、その資産が押収されたほか、一部の主要ロシア企業の資産が国有化されるなど、大規模な資産移転が発生している。

資産没収の規模と背景

モスクワの法律事務所NSPの調査では、過去3年間で実施された「国有化」の規模が3兆9000億ルーブルに上るとされ、ロシア主要紙コメルサントはこれを「要塞ロシア」経済モデルの表れだと指摘している。この資産没収は、ウクライナ侵攻後に西側企業ロシア市場から相次いで撤退したことや、ロシア政府が一部の「非友好国」関連資産を管理下に置いた動きと関連している。

モスクワ中心部のビジネス街。ウクライナ戦争下でのロシア経済と資産没収の文脈。モスクワ中心部のビジネス街。ウクライナ戦争下でのロシア経済と資産没収の文脈。

戦時下のロシア経済と「新たな発展モデル」

ウクライナ戦争が続く中でも、ロシア経済は多くの予想を上回る回復力を示している。しかし、国際通貨基金(IMF)の予測によれば、2024年のロシアの名目国内総生産(GDP)は約2兆2000億ドルにとどまり、中国、欧州連合(EU)、米国といった主要経済圏と比べると依然として小規模である。

ロシア当局者らは、これらの特別な措置は「ロシア経済を沈没させようとする西側の明らかな企て」を防ぐために必要だったと説明している。プーチン大統領は、西側企業撤退によって国内生産者が市場の隙間を埋め、西側の制裁が国内企業の発展を促すことになったと繰り返し述べている。大統領は、「時代遅れのグローバリゼーション」とは一線を画す「新しい発展モデル」の構築を呼びかけている。

今回の結果は、ウクライナ戦争とそれに伴う制裁が、ロシア国内で大規模な資産の再分配と経済構造転換を引き起こしている現状を浮き彫りにする。当局はこれを西側からの圧力に対抗し、国内経済を強化するための措置と位置づけている。

参考文献:
ロイター通信 (Reuters)
モスクワの法律事務所NSPの調査
コメルサント紙の報道