世界の「普通の牛乳」 常識が覆る?フィンランド・ペルーの驚き事情

日本で「普通の牛乳」と聞くと、スーパーで見かける乳脂肪分3.6%程度のパック牛乳を思い浮かべる人がほとんどだろう。しかし、世界に目を向けると、この「普通の牛乳」の定義は国によって大きく異なることが、ある「台所探検家」の報告から明らかになった。本記事では、フィンランドやペルーといった国の驚くべき牛乳事情を紹介する。

日本における「普通の牛乳」とは

日本では、乳脂肪分3.6%前後のものが「種類別:牛乳」として一般的だ。スーパーには「特濃」と銘打たれた4.4%程度のものや、乳脂肪分を取り除いた低脂肪・無脂肪牛乳も並ぶが、家庭で日常的に飲まれるのは3.6%が中心であることが多い。これは、給食で提供されるのもこのタイプだったり、売り場の多くのスペースを占めていることからも伺える。多くの日本人にとって、「牛乳といえば3.6%」という認識が根強いだろう。

スーパーに並ぶ日本の一般的な牛乳パックスーパーに並ぶ日本の一般的な牛乳パック

世界一の消費国 フィンランドの「水のような牛乳」

一方、一人当たりの牛乳消費量が世界一とされる北欧のフィンランドでは、「普通の牛乳」の概念が大きく異なる。ここでは、水色のパックに入った乳脂肪分1%未満の無脂肪乳が主流だ。この牛乳は非常にさらさらしており、「まるで水のように薄い」と感じられるという。フィンランドの人々にとって、日本の一般的な3.6%牛乳は「料理用」と見なされ、「脂肪分が多くて飲むには不健康だ」という声もある。スーパーでは、乳脂肪分によってパックの色分け(赤:3.6%、青:1.5%、水色:1%未満)がされており、多くの人が水色のパックを選んでいる。この背景には、フィンランドの食文化でバターやクリームの消費量が多いこと、そしてバター製造時に出る副産物である低脂肪乳を有効活用するという考え方があるのかもしれない。

フィンランドの異なる色の牛乳パックやペルーの缶詰牛乳フィンランドの異なる色の牛乳パックやペルーの缶詰牛乳

南米ペルーの「練乳のように濃い牛乳」

対照的に、南米のペルーでは「普通の牛乳」が非常に濃厚だ。一般的なものは紙パックではなく、トマト缶のような缶詰に入っている。蓋を開けると、中身はだいぶ「とろっとした白い液体」で、その味は「ミルクを煮詰めたように濃くて甘い」という特徴を持つ。ペルーでは、この濃厚な牛乳が日常的に使われており、特にパパイヤなどのフルーツと砂糖と一緒にミキサーにかける「ジュース」として親しまれている。これは、日本の液体の牛乳とは全く異なる形態であり、その使い方も興味深い。

結論

このように、一言で「牛乳」といっても、国や地域によって「普通」とされる形態や乳脂肪分は大きく異なることがわかる。日本の3.6%牛乳が当たり前だと考える感覚は、世界では必ずしも通用しないのだ。フィンランドの無脂肪乳やペルーの缶詰牛乳は、それぞれの食文化や生活習慣の中で育まれた、その土地ならではの「牛乳」の姿と言えるだろう。グローバルな視点を持つことの重要性を示唆する事例であり、食を通じて世界の多様性を理解する一助となる。

【参考資料】
岡根谷実里『台所探検家、地球の食卓を歩く』より