参院選和歌山選挙区の激戦 二階伸康氏「パンダ誘致」公約の裏に世耕氏の影

7月20日の投開票に向け、参議院選挙が激しさを増している。全国的に自民党候補の苦戦が伝えられる中、かつて「紀州戦争」と呼ばれた二階家と世耕家の因縁が再び注目されている和歌山選挙区(改選数1)も例外ではない。自民党公認候補として戦う二階俊博元幹事長の三男、伸康氏(47)もまた、厳しい接戦の中にいる。そんな伸康氏の主要政策の一つが、なんと「再び和歌山にパンダを!」という異色の公約だ。

拮抗する戦況

和歌山選挙区は定数1に対し、今回は7名が立候補している。長らく保守王国として知られる和歌山県では、参議院議員選挙において、過去に一度の例外を除き、自民党が議席を維持してきた歴史がある。衆議院で連続13回当選し、歴代最長の5年2カ月にわたり幹事長を務めた二階俊博氏の地元であり、その後継として立候補した伸康氏が有利になるのは当然と見られていた。

しかし、選挙戦の序盤、各紙が報じた情勢分析では、伸康候補は、無所属で出馬している望月良男候補と全くの互角、あるいは猛追する形での激しい接戦を演じていると分析されている。読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、産経新聞、日本経済新聞など、主要各紙の情勢報道は軒並み、二階氏と望月氏の「がっぷり四つ」の構図を伝えている。

参院選和歌山選挙区に立候補した二階伸康候補と選挙公約である「パンダ誘致」を示すイメージ画像参院選和歌山選挙区に立候補した二階伸康候補と選挙公約である「パンダ誘致」を示すイメージ画像

世耕氏の支援と「紀州戦争」の背景

この厳しい戦いの背景には、対立候補である望月氏を、元経済産業大臣で影響力の大きい世耕弘成氏が支援していることが挙げられる。

世耕家は弘成氏の祖父の代から和歌山で政治活動を続け、確固たる地盤を築いてきた。弘成氏自身も参議院議員として5回当選し、参院幹事長という要職を担っていた実力者である。しかし、一昨年発覚した自民党の裏金問題、特に安倍派における大規模な裏金づくりが批判され、派閥幹部だった世耕氏は離党勧告を受け、昨年党を離れた。

この状況を世耕氏は逆手に取ったとされる。昨年の衆議院選挙では、同様に裏金問題に関わった二階俊博元幹事長が引退し、和歌山二区の地盤を息子の伸康氏に譲った。もともと首相を目指し、衆議院への転出を視野に入れていた世耕氏は、この機会を捉え、参議院議員を辞職。無所属候補として二区から出馬した。これは文字通り背水の陣であったが、世耕氏は下馬評を覆して当選を果たした。伸康氏に3万票以上の差をつけ、比例復活をも許さない「紀州戦争」の第一幕を世耕氏が制した形となった。

その後、今年2月に自民党和歌山県連が伸康氏の参院選公認を発表すると、今度は世耕氏に近いとされる前有田市長の望月氏が無所属での参院選出馬を表明した。この動きの裏には、伸康氏を参議院でも落選させ、「二階家」の政治力を完全に削ごうとする世耕氏の意向が強く働いているのは間違いないだろう。望月陣営は世耕氏による全面的な支援を受けており、世耕氏自身も応援演説に立つなど、強力なバックアップ体制が敷かれている。

確かに和歌山県において「二階」の名前、特に俊博氏の長年の活動によって築かれた地盤は強固だが、それは主に俊博氏が当選を重ねてきた衆議院旧三区(御坊市、田辺市、新宮市などを中心とする地域)でのことである。一方、参議院選挙は県全体が一つの選挙区となるため、有権者数の多い県都・和歌山市での得票が勝敗を分ける鍵となる。この和歌山市においては、二階家の地盤は旧三区ほど盤石ではないのが現状だ。

これに対し、世耕氏は参議院議員として県全体を対象とした選挙戦を過去5回も戦い抜いており、その地盤は県下全域に広がっている。その世耕氏が全面的な支援を行う望月氏が強力な候補となっているのは、こうした背景があるためだ。

今回の参院選和歌山選挙区は、単なる議席争いではなく、裏金問題を機に顕在化した二階派と世耕派の対立が、それぞれの後継候補や代理候補を介して繰り広げられる「紀州戦争」第二幕の様相を呈している。伸康氏の「パンダ誘致」公約は、厳しい戦いを乗り切るためのユニークな政策として注目される一方、選挙戦全体の焦点は、二階家が長年培ってきた地盤を守り抜けるか、それとも世耕氏の捲土重来が成功するかに集まっている。

出典: https://news.yahoo.co.jp/articles/cdc56f87101f7424fce5a4601c89205840fc5d82