経済評論家・鈴木貴博氏は、2020年出版の『日本経済予言の書』で、2020年代の日本の政治動向を具体的に予測しました。当時「安倍一強」と呼ばれ磐石に見えた自民党政権の将来に警鐘を鳴らしたその内容は、現在進行形で現実のものとなりつつあります。本記事では、鈴木氏の予測した自民党弱体化と野党ポピュリズム政権誕生の「3つの要素」、そしてその根拠となる「兆しの芽」を詳述します。
2020年代の日本の政治予測:自民党弱体化の兆し
鈴木氏の予測は、2020年当時の日本の政治状況から始まりました。当時「安倍一強」と称され磐石に見えた自民党政権は、コロナ禍で五輪延期やワクチン接種、GoToトラベルなど対策を打ち出し、その凋落を想像することは困難でした。しかし、鈴木氏はその著書の中で、「未来予測の立場から考えると、3つの要素が同時に起きれば、自民党が崩れ野党のポピュリズム政権が誕生するような状況が2020年代のどこかで起きる」とはっきりと予言していました。今回の参議院議員選挙後も政権交代はないものの、与党の議席減は確実視され、予言が現実味を帯びています。
未来予測の核心:サプライズは言い訳にならない
鈴木氏がコンサルティングファーム時代に学んだ未来予測の最も重要な教えは、「サプライズは言い訳にならない」でした。「どんな思いもよらない前提条件の変化が起きても、5年前にさかのぼってみると必ずその変化の兆しを発見できる」という信念に基づき、予測者は予期せぬ事態に対しても言い訳が許されないという厳しさがあります。この前提に基づき、鈴木氏は2020年時点で、今後10年以内に起きる政治的サプライズの「兆しの芽」がすでに芽生え始めていたと指摘します。
2008年9月15日、経営破綻翌日のリーマン・ブラザーズ本社ビル。経済危機の兆候を示唆する一枚
2019年埼玉補選に現れた「兆しの芽」
象徴的な出来事として挙げられるのが、2019年10月に行われた埼玉での参議院議員補欠選挙です。当選したのは前埼玉県知事で、数字上は圧勝に見えました。立候補者はN党の立花孝志氏一人だったため、圧倒的な得票差は当然と思われました。しかし、この選挙では奇妙な現象が起きていました。東秩父村を除く全ての自治体で、立花候補が10%を超える票を獲得していたのです。本来、勝利する見込みがないとされた選挙に出馬した立花候補の得票率は、有効投票全体の約14%にも達しました。この結果は、既存政治への不満や新選択肢への潜在需要を示す「兆しの芽」として、鈴木氏の予言の根拠となりました。
鈴木貴博氏の2020年の政治予測は、「サプライズは言い訳にならない」原則に基づき、既存政治への不満という「兆しの芽」を的確に捉えていました。特に2019年の埼玉補選でのN党・立花孝志氏への支持は、自民党弱体化とポピュリズム政権台頭の予兆として分析されています。現在の与党議席減少は、この予言の確からしさを裏付けており、今後の日本の政治動向における変革の兆しを注視することの重要性を示しています。
Source link
鈴木貴博 著『日本経済予言の書』(PHPビジネス新書)