北朝鮮、金正恩総書記肝煎りリゾート「元山葛麻」に異変 – 外国人受け入れ中断の衝撃

北朝鮮の金正恩総書記が約10年を費やし完成させた豪華海岸リゾート「元山葛麻海岸観光地区」で、外国人観光客の受け入れが突然中断される異例の事態が生じています。外貨獲得を狙ったこの一大観光事業は、早くも正念場を迎えているようです。金総書記の威信をかけた「宿願事業」の行方に注目が集まります。

北朝鮮の元山葛麻海岸観光地区。豪華なホテルやウォータースライダーなどレジャー施設が並ぶビーチリゾートの全景。北朝鮮の元山葛麻海岸観光地区。豪華なホテルやウォータースライダーなどレジャー施設が並ぶビーチリゾートの全景。

金総書記の「宿願事業」としてのリゾート開発

北朝鮮東部、江原道に位置する元山葛麻海岸は、美しい白い砂浜で知られ、古くから保養地として親しまれてきました。金総書記はここに「世界に誇る朝鮮式の独特かつ近代的な海岸観光都市」の造成を命じ、2014年から本格的な開発が開始。最高指導者就任以来、外貨獲得を念頭に観光産業に注力しており、元山地区では2012年末に「馬息嶺スキー場」を開設しています。冬はスキー、夏はビーチと、元山葛麻海岸は次の観光拠点として期待されました。

当初2019年完成を目指しましたが、国連制裁による資材不足や新型コロナウイルスの影響で工事が遅延。今年の6月24日には待望の竣工式が行われ、金総書記夫妻に加え、娘のキム・ジュエ氏も出席し内外の注目を集めました。金総書記は「人民のために最もやり遂げたかった宿願事業」として、その完成に「大きな満足」を示しました。

壮大な規模と外貨獲得への期待

北朝鮮メディアによると、観光地区はホテルなど宿泊能力だけで2万人、海水浴場や各種サービス施設を含め1日4万人規模の収容能力を持つとされます。この広大な施設は、北朝鮮住民のみならず、世界各国から観光客を呼び込み、外貨獲得を目指す強い願望の表れです。

7月1日に住民向け営業が始まると、多くの観光客が訪れ、海水浴やウォータースライダー、モーターボートといったマリンスポーツを楽しむ様子が連日大きく報じられました。

突然の外国人観光客受け入れ中断、背景にある疑惑

7月7日からは外国人観光客の受け入れも始まり、ロシアからの団体ツアー客の到着が確認されました。しかし、この方針は直後に転換。北朝鮮当局の観光情報サイト「朝鮮観光」が「外国人観光客は暫定的に受け入れていない」と発表したのです。変更理由の説明はなく、憶測が広がっています。

かねて「観光客は演出では」との報道もあり、宿泊能力2万人、1日4万人規模の稼働は困難とみられ、採算性にも疑念がありました。金総書記の威信をかけた事業は、早くも正念場を迎えています。

金総書記肝煎りの元山葛麻海岸観光地区は、外貨獲得と人民への奉仕という二大目標を掲げた国家的なプロジェクトです。しかし、外国人観光客の突然の受け入れ中断は、国際制裁や国内経済の課題など、北朝鮮が抱える複雑な事情を浮き彫りにしました。この豪華リゾートの未来は、依然として不透明な状況にあります。

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