米国のドナルド・トランプ大統領は、日本との歴史的な関税交渉合意を「史上最大」と称賛し、その外交的成果を大々的にアピールしました。しかし、米国内では、少女の人身取引罪などで起訴された実業家ジェフリー・エプスタイン氏との関係を巡る疑惑がメディアの厳しい追及を受けており、その輝かしい外交発表の陰に隠れつつあります。
「史上最大」と称された日米関税交渉合意の裏側
トランプ大統領は22日、日本などとの関税交渉での合意発表後、ホワイトハウスでの催しに共和党の下院議員らを招集しました。その席で、「おそらく史上最大の日本との合意だ。多くのお金が入ってくる」と力説し、自らの交渉手腕と外交成果を強くアピールしました。交渉筋によると、大統領執務室で行われた赤沢経済再生相との交渉終盤には、マイク・ジョンソン下院議長ら複数の共和党議員が同席したとされています。これは、トランプ大統領が有力な貿易相手国である日本から好条件を勝ち取る「ディール」(取引)の瞬間を、身内に誇示する狙いがあったものとみられています。
ホワイトハウスは同日、日本に加えてインドネシア、フィリピンとも関税交渉で合意したことを発表しました。キャロライン・レビット大統領報道官は自身のソーシャルメディア(SNS)で、「大統領はたった1日で三つの大きな合意を確実にした」と強調し、大統領の外交手腕を称賛しました。
ホワイトハウスでのイベントで、日米関税交渉の合意後、共和党下院議員らと握手するドナルド・トランプ米大統領
エプスタイン疑惑:メディアの焦点とトランプ氏の苦境
しかし、米国の主要メディアの関心は、トランプ大統領の華々しい貿易成果にはほとんど向けられず、代わりにエプスタイン氏との関係に集中しています。エプスタイン氏は勾留中の2019年に死亡しましたが、トランプ氏とエプスタイン氏の接点を示すとされる証拠が、関税交渉やその他の外交ニュースに先駆けて大々的に報じられ続けています。これは、トランプ政権の外交的アピールが、スキャンダルによってかき消され気味であることを示しています。
疑惑払拭への試みとSNSでの反論
トランプ大統領は、エプスタイン氏との関係を巡る報道の火消しに躍起になっています。彼は報道を「虚偽だ」と主張し、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に対する訴訟を起こす行動に出ました。さらに、マーチン・ルーサー・キング牧師暗殺事件に関する機密文書を突然公表するなど、世間の注目を別の方向に向けようとする動きも見られます。野党・民主党は、これらの行動がエプスタイン氏との関係から世間の注意をそらそうとする意図的な試みであると非難しています。
トランプ大統領自身も、22日には自身のSNSアカウントに投稿し、「フェイクニュースが話題にしたいのはジェフリー・エプスタインの捏造ばかりだ!」と不満をあらわにしました。この投稿は、メディアの報道が自身の「外交成果」ではなく、「エプスタイン問題」に偏っていることへの苛立ちを浮き彫りにしています。
結論
ドナルド・トランプ米大統領は、日本などとの関税交渉合意という重要な外交成果を「史上最大」と称賛し、その手腕をアピールしました。しかし、同時期に深刻化する実業家ジェフリー・エプスタイン氏との関係を巡る疑惑が米メディアの主要な関心事となり、大統領の外交的アピールを大きく上回る形で報じられています。トランプ氏が疑惑の鎮静化に努め、メディアの報道姿勢に不満を示す中、このスキャンダルは今後の米国政治と世論に継続的な影響を与え続けることが予想されます。
参考文献
- Source link (読売新聞)