韓国における2024年5月の人口動態統計は、婚姻件数と出生児数がいずれも前年同月比で連続増加を記録し、国内の社会情勢に新たな潮流が生まれている可能性を示唆しています。特に婚姻件数は14カ月連続、出生児数も11カ月連続の上昇となり、これは過去に類を見ない長期的な回復傾向として注目されています。統計庁の分析によると、主な婚姻・出産年齢層の人口増加や、政府・地方自治体による手厚い支援策が複合的に影響していると見られます。
婚姻件数の顕著な回復:コロナ禍以前の水準へ接近
2024年5月の韓国における婚姻件数は2万1761件を記録し、前年同月比で4.0%の増加となりました。これは昨年4月からの14カ月連続の増加であり、統計作成以来最長の連続上昇期間です。新型コロナウイルス感染症の影響で一時的に2万件を下回っていた婚姻件数は、昨年5月に2万921件と回復基調に転じ、今年5月にはさらに増加しました。
統計庁人口動態課のパク・ヒョンジョン課長は、「コロナ禍以前の水準に完全に回復したと断定するのはまだ早いが、昨年2万件台を回復したことに加え、今年5月には2万1761件にまで上昇した点は意義深い」と説明し、コロナ禍で延期されていた結婚が実現している状況や、社会全体の回復が影響している可能性を示唆しました。
幸せそうな家族のイメージ。韓国で婚姻件数と出生数が増加傾向にある現状を象徴。
出生児数の継続的な増加と過去の傾向
婚姻件数と同様に、2024年5月の出生児数も2万309人を記録し、前年同月比で3.8%増加しました。これは11カ月連続の増加であり、2010年3月から2011年8月にかけての18カ月連続増加以来の長期的な上昇傾向です。さらに特筆すべきは、婚姻と出生の指標が同時に11カ月連続で上昇している点で、これは1991年3月から1992年12月にかけての22カ月連続同時増加以来の最長期間となります。
5月の合計特殊出生率(女性1人が生涯に産むと予想される平均出生児数)は0.75で、前年同月比で0.02ポイント増加しました。この数値は依然として低水準ですが、わずかながらも上昇に転じたことは、人口動態における重要な変化の兆候として捉えられています。
増加の背景:主要年齢層の人口増と政策的支援
今回の婚姻件数と出生児数の増加現象は、複数の要因が複合的に影響していると考えられます。最も顕著な要因の一つは、主要な婚姻・出産年齢層の人口増加です。統計庁の「年齢別婚姻」および「母親の年齢別出生率」の統計によると、30〜34歳が結婚と出産が最も活発に行われる年齢層ですが、1990年代初中盤に生まれた第2次ベビーブーム世代(1964~1974年生まれ)の子どもたちがこの年齢層に達し、結婚・出産数の増加に貢献しています。
実際、2020年6月時点では151万8千人余りだった30~34歳の女性人口は、2024年6月時点では165万6千人余りに増加しており、約9%の伸びを見せています。パク課長は、「婚姻の増加と、主要出産年齢である30代前半の女性人口の増加が出生児数の増加に影響を与えた」と述べ、さらに「出産に対する肯定的な認識の変化、そして政府や地方自治体レベルでの出産支援政策も影響を与えていると考えられる」と付け加えました。
将来的にこの年齢層の人口が減少したとしても、必ずしも出生児数が減少するとは断定できないと統計庁は分析しています。これは、結婚・出産年齢が全体的に高まる傾向にあり、35~39歳の年齢層が2番目に高い年齢別出生率を記録しているためです。5月の年齢別出生率では、35~39歳の女性の出生率が47.4であり、30~34歳の女性の出生率(69.1)に次いで高い水準を示しています。このトレンドは、今後の人口動態を予測する上で重要な要素となります。
まとめ
韓国の2024年5月の統計データは、婚姻件数と出生児数がそれぞれ14カ月連続、11カ月連続で増加するという、非常にポジティブな人口動態の兆候を示しています。これは、主に30代前半の主要出産年齢層の人口増加と、政府や地方自治体による出産奨励政策、そして社会全体での出産に対する肯定的な認識の変化が複合的に作用した結果と考えられます。
この回復傾向がコロナ禍で抑制されていた需要の一時的な解消に過ぎないのか、それとも長期的な人口動態の好転の始まりとなるのかは、今後の推移を継続的に注視する必要があります。しかしながら、今回のデータは、積極的な政策と社会的なサポートが人口減少問題に対して一定の効果をもたらし得る可能性を示唆しており、少子化対策を模索する他の国々にとっても示唆に富む事例となるでしょう。
参考文献:
- 統計庁. 「5月の人口動向」. 2024年7月23日発表.
- Yahoo!ニュース. 「5月生まれ2万309人…11カ月連続で前年同月に比べ増加 結婚も14カ月連続で増え、2万1761件に 結婚・出産が11カ月連続で共に上昇」. ハンギョレ新聞. https://news.yahoo.co.jp/articles/bd03721af6150154c3db613c6e88c7f903023900