伊東市を巡る学歴詐称疑惑の追及が本格化したのは、6月上旬に市議会議員らに届いた一通の怪文書が発端でした。この疑惑の中心にいる田久保眞紀伊東市長は、停滞する伊東市政の現状と自身の今後について、集英社オンラインのインタビューに応じました。本稿では、特に議論の的となっている卒業証書の提示に関する「チラ見せ」問題の真相と、市長が市民に向けて語った言葉に焦点を当てます。
卒業証書「チラ見せ」問題の食い違い:19.2秒か10秒か
8月13日に開催された百条委員会では、卒業証書の提示、通称「チラ見せ」を巡る報道が大きく取り上げられました。この「チラ見せ」とは、6月上旬に青木敬博副議長と中島弘道議長に卒業証書を見せた際の状況を指します。田久保市長によると、6月4日午前9時30分、就任挨拶のために訪れた両氏との面談時に、普段とは異なるよそよそしい雰囲気を察し、とっさに手元にあったスマートフォンの録画ボタンを押したといいます。この録画は音声のみが記録されています。
伊東市長・田久保眞紀氏が学歴詐称疑惑について語る
「偶然か否かはわかりませんが、その日は『広報いとう』7月号などへの経歴記載のため、秘書課から卒業証書を持参するよう言われており、ちょうど手元にありました」と市長は語ります。議長から見せたいという要望があったため、市長は「わかりました。見せますよ」と応じ、証書を提示しました。この提示時間について、田久保市長は19.2秒だったと主張していますが、一方の青木副議長と中島議長は10秒であったと主張しており、両者の間で主張が食い違っています。市長は、提示後に議長から「いいじゃん」というコメントがあったことを音声記録から確認できるとしています。この「チラ見せ」に関する時間の食い違いが、百条委員会における主要な争点の一つとなっています。
田久保伊東市長が提示した東洋大学の在籍期間証明書と百条委員会に関する通知書
市民への謝罪と伊東市政継続への決意
一連の疑惑に対し、田久保市長は「ご心配もおかけしたし、ご迷惑もおかけした部分に関しては本当に申し訳ないという思いです。市民の皆さんのどんなお考えも重要だと考えています」と市民に向けて謝罪の意を示しました。
当初、7月の会見では自身の経歴問題から辞職を決意し、改めて民意を問う再選を目指す意向でした。しかし、その後の状況は二転三転し、厳しい批判の声がある一方で、「辞めるな、負けるな」という続投を求める声も多数寄せられたといいます。「市長になる前の状態に戻ってしまうことだけは避けてほしい」という市民からの切実な願いも、続投を決断する大きな要因となりました。田久保市長は、伊東市政の改革は個人的なものではなく、市民が勝ち取った前進であると強調。「不安や心配をかけたことは謝罪するしかないが、市民の皆さんが自ら進める改革をもう少し続けられないものか」との思いから、現在の厳しい立場にありながらも、改革の歩みを止めず、現状でやれることを最大限に進めていく姿勢を示しました。
伊東市政を取り巻く学歴詐称疑惑は依然として注目の的ですが、田久保市長は市民の声を真摯に受け止め、市政の停滞を避けるための決意を表明しています。今後の伊東市政の行方と、市長が掲げる改革への取り組みがどのように進展していくのか、引き続き市民の関心が集まることでしょう。
参考文献: