伊東市・田久保眞紀市長(55)の“学歴詐称疑惑”を巡る騒動は、8月13日に市議会の特別委員会(百条委員会)で証人尋問が行われた後も、その混迷を深めるばかりだ。疑惑の核心にある「東洋大学法学部卒業」という経歴の真偽は依然として不明瞭なままであり、騒動の終息は見通せない。今回の百条委員会では新たな事実は何も明らかにならなかった上、田久保市長は自身の主張を繰り返し、卒業証書の提出を拒否。その一方で、市議会の発言を問題視し、自身の「母校」と主張する東洋大学への謝罪を求めるという“徹底抗戦”の姿勢を崩していない。
学歴詐称疑惑で百条委員会に出頭した伊東市・田久保眞紀市長。緊迫した面持ちで証人尋問に臨む様子。
学歴詐称疑惑の経緯と市長の主張
伊東市長・田久保眞紀氏を巡る学歴詐称疑惑の発端は、今年6月初めに市議会に届けられた告発文書に遡る。市の広報誌に記載されていた「東洋大学法学部卒業」という田久保氏の経歴が虚偽であると指摘されたのだ。告発を受け、田久保氏本人が東洋大学に出向き確認を行った結果、大学側からは「除籍」されていたことが判明したという。
しかし、田久保市長は自身は大学を卒業したとの認識を強く主張し、その証拠として卒業証書を所有していると公言している。にもかかわらず、公職選挙法違反で刑事告訴されていることを理由に、「訴追につながる恐れがある」として証拠提出を拒否。今回の百条委員会における証人尋問でも、同様の理由で提出を拒み、「(東洋大学に確認して初めて)卒業ではなく除籍だと知った」と従来の主張を繰り返すに留まった。このため、百条委員会は疑惑解決に向けた具体的な進展をもたらすことはなかった。
混乱続く市政と市長の“徹底抗戦”
この“田久保劇場”により市政は混乱を極め、伊東市役所にはいたずら電話が殺到するなど、市民生活にも影響が出ている。しかし、田久保市長はこれに対し“徹底抗戦”の構えを見せ、8月14日には伊東市議会の中島弘道議長のもとを訪れ、議会に対する抗議文を手渡した。
抗議文手交の際、田久保市長は中島議長に対し、13日の百条委員会での発言で東洋大学を「一方的に事務にミスがあったと決めつけ、“悪の組織”という看過できない発言があった」と批判。自身が大学に協力を仰ごうとしている矢先の発言であるとし、「大学の側にも謝罪をしてください」と強く要求した。
同日夕方、市長は自身のフェイスブック上でも抗議文を掲載。そこには、「特別委員会の調査権限を逸脱し、ライブ配信を通じて全国に発信されたこのような発言は、伊東市議会が東洋大学の名誉を毀損する行為であり看過できない」「大学への正式な文書による謝罪、及びその謝罪文の伊東市議会ホームページ等への記載による名誉回復に尽力することを申し入れる」と記されており、議会の責任と謝罪を求めている。
問題発言の真意とSNS上の反響
田久保市長が問題視した「“悪の組織”という発言」は、13日の百条委員会で委員の四宮和彦議員が、「(田久保市長に)正当性があるのなら、誰が悪いのか。東洋大学が悪いに決まっている」という文脈で述べたものだった。四宮議員は、市長の正当性を仮定した上で、市民の信頼回復と市長自身の正当性証明のためには東洋大学に責任を追及すべきだと主張していた。
この「母校」に対する発言に憤慨した田久保市長に対し、SNS、特にX(旧Twitter)では、彼女の対応を批判する声が多く上がっている。「他人の発言は批判するのに自身は説明を避ける」「切り取りで勝手に解釈している」「印象操作、論点ずらしだ」「東洋大学に謝罪を要求するのは筋違い」「『田久保の言い分が正しいとするならば』という前置きを無視した悪質な切り取り」といった厳しい指摘が相次いでいる。
全国紙社会部記者は、四宮議員の発言について、「“悪の組織”という表現は東洋大学にとって容認できないものの、四宮氏も発言撤回に応じています。しかし、彼は『田久保市長に正当性があるのなら』という仮定に基づき東洋大学を批判しており、責任の所在を考える上でこの仮定は議論を進める上で必要でした。その文脈を無視して発言を切り取り抗議するのはフェアではない」と分析している。
混迷極まる“田久保劇場”の行方
伊東市長・田久保眞紀氏の学歴詐称疑惑を巡る一連の騒動は、百条委員会による証人尋問が行われたにもかかわらず、依然として具体的な解決の糸口が見えない状況が続いている。市長側は卒業証書の公開を拒み、従来の主張を繰り返す一方で、市議会の発言を問題視し、第三者である大学への謝罪を要求するという、市民の理解を得にくい行動に出ている。これにより市政の混乱は深まるばかりであり、市民の間には不信感と疲弊が広がっている。この混迷極まる“田久保劇場”がいつ、どのような形で閉幕を迎えるのか、その行方は不透明なままだ。