南海トラフ「巨大地震警戒」時、52万人超が事前避難対象に – 自治体の課題浮き彫り

南海トラフ巨大地震の発生リスクが平時よりも高まった際に発令される「南海トラフ地震臨時情報」の一つ、「巨大地震警戒」。この情報が発表された場合、津波からの避難が間に合わない恐れがある地域では、最大1週間の事前避難が求められます。日本テレビの取材により、この事前避難の対象となる住民が全国でおよそ52万人に上ることが明らかになりました。

南海トラフ臨時情報の詳細と事前避難の必要性

南海トラフ地震臨時情報「巨大地震警戒」は、M8クラス以上の大規模な地震が発生した後、さらに大きな地震(M9クラス)が後追いする可能性が高まった場合に発令されます。この情報は、住民に対して今後の地震発生に備え、特に津波からの避難時間を確保するために、指定された地域からの事前避難を促すものです。今回の調査では、この重要な防災対策が全国規模でどの程度影響を及ぼすかが具体的に示されました。

対象となる住民数と高齢者避難の重要性

国が全国の自治体を対象に実施したアンケート調査の結果、事前避難の対象となる住民は合計でおよそ52万人に達することが判明しました。このうち、避難に時間を要する高齢者や要介護者など、特に配慮が必要な人々を対象としている地域での合計は約27万5000人となっており、全体の約半分を占めています。これは、高齢化が進む日本において、災害時における脆弱な層の避難支援が喫緊の課題であることを改めて浮き彫りにしています。

調査対象地域と各都道府県の内訳

今回の調査対象は、今年6月時点で「防災対策推進地域」に指定されている1都2府26県の707市町村です。各自治体からの回答に基づき、都道府県別の事前避難対象者の合計は以下の通りです。

南海トラフ地震「巨大地震警戒」時の事前避難対象となる防災対策推進地域を示した日本地図南海トラフ地震「巨大地震警戒」時の事前避難対象となる防災対策推進地域を示した日本地図

  • 東京都:約2,500人
  • 千葉県:約17,400人
  • 静岡県:約70,200人
  • 愛知県:約60,500人
  • 三重県:約66,600人
  • 滋賀県:約6,700人
  • 和歌山県:約56,100人
  • 徳島県:約28,000人
  • 香川県:約2,600人
  • 愛媛県:約28,300人
  • 高知県:約92,100人
  • 大分県:約4,400人
  • 宮崎県:約79,900人
  • 鹿児島県:約5,100人

自治体の課題:人手不足の影響

一方で、防災対策の推進地域に属する204の市町村が、住民の事前避難対象となる地域指定について「検討中」または「検討していない」と回答していることが明らかになりました。これらの市町村の半数が、その理由として「人手不足」を挙げています。これは、大規模災害に備える上で、地方自治体が直面する現実的な課題であり、効果的な防災体制の構築には、人員の確保と育成が不可欠であることを示唆しています。

南海トラフ巨大地震への備えは、国家的な重要課題です。52万人超という大規模な事前避難対象者の存在と、それを支えるべき自治体における人手不足の問題は、今後の防災対策において、より一層の連携と支援が必要であることを浮き彫りにしています。国民一人ひとりが防災意識を高め、地域社会全体で協力していくことが、将来の災害リスク軽減に繋がると言えるでしょう。

参考資料