記録的な猛暑が続く中、もはや生活に欠かせないエアコン。しかし、夏場の高温多湿な環境と、エアコンで冷やされた室内との温度差が拡大することで、目に見えない場所で結露が発生するケースがあります。この結露を放置するとカビが繁殖し、私たちの健康に深刻なリスクを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。自宅に潜むカビの危険性と、その効果的な対策について専門家が解説します。
「カビ」はなぜ増える?増殖条件と健康リスク
カビは「真菌(しんきん)」と呼ばれる菌類の一種で、空気中に浮遊する胞子が何かの表面に付着し、根(菌糸)を張って成長します。成長したカビは再び胞子を空気中に放出し、この循環によって増殖していきます。(株式会社衛生微生物研究センターHPより)
カビの増殖には特定の条件が揃うことが必要です。具体的には、温度20℃〜30℃、湿度60%以上、そしてホコリや石けんカス、皮脂など栄養源となる物質がある場合に、カビは活発に繁殖します。「カビ取りマイスター」代表の三好孝典氏によると、「現在のスタジオにも、1立方メートル当たり大体208個から500個ほどのカビが浮遊している」といいます。
通常、人間の体には免疫があるため、これらのカビ胞子があるからといって直ちに健康に害があるわけではありません。しかし、特定の条件が揃ってカビが大量に増殖すると、健康に悪影響を及ぼす「カビ毒」を出す種類のカビも現れるため、注意が必要です。
見落としがちな夏の脅威「夏型結露」のメカニズム
皆さんのご自宅の壁紙のフチに、以前はなかった黒ずみが見られることはありませんか?実はこの黒ずみ、エアコンの使用によって引き起こされる「夏型結露」の影響で発生したカビである可能性が高いのです。
「夏型結露」とは、一体どのような現象なのでしょうか。冬の結露は、室内の暖かい空気が冷たい外気に面した窓ガラスに触れることで水蒸気が凝結し、窓に水滴が付く現象です。一方、夏の場合、室内はエアコンで涼しく保たれているのに対し、屋外は高温多湿な環境です。しかも、夏は空気中の水分量が冬の約4倍にもなります。この状況下で、エアコンの冷気が室内側の壁を冷やすと、壁の内部という目に見えない場所で結露が発生してしまうのです。
壁は通常、外壁と内壁の間に構造体を強化する合板、断熱材、そして湿気の侵入を防ぐ防湿層で構成されています。夏型結露は、エアコンで冷やされた涼しい空気に面する内壁の内部、特に防湿層に発生しやすくなります。厄介なことに、発生した結露は断熱材がまるでスポンジのように吸い込んでしまいます。この状態が放置されることで、壁の内部という気づきにくい場所でカビが大量に発生・増殖してしまうのです。
隠れた壁の内部で発生した「夏型結露」により増殖したカビのイメージ。
まとめ:見えないカビの脅威から住まいと健康を守るために
夏の快適な室内環境を支えるエアコンが、知らず知らずのうちに壁の内部にカビを繁殖させる「夏型結露」を引き起こすことがあります。壁紙の黒ずみなどのサインを見逃さず、定期的な換気や適切な湿度管理を心がけることが、見えないカビの脅威から住まいと家族の健康を守る上で極めて重要です。特に夏場は、室内の温度だけでなく、湿度にも意識を向けた生活を心がけましょう。
参考資料
- TBS NEWS DIG Powered by JNN: https://news.yahoo.co.jp/articles/9d767f2e79b0b7695216bb54ba802775a91d1c2c
- 株式会社衛生微生物研究センターHP