少子化で、部活動を維持できない学校が大半になる
少子化が進む中、部活動の地域展開に関する議論が続いている。これまで大人数でのダイナミックな演奏が重視されてきた吹奏楽部はとくに、活動のあり方や価値観から見直す必要がささやかれ始めている。北海道教育大学音楽文化専攻で合奏研究室 21世紀現代吹奏楽プロデューサーの渡郶謙一氏は、まず「吹奏楽コンクール」の存在意義を深掘りすることから未来の吹奏楽部を考えるべきだと説く。吹奏楽部を取り巻く環境が現在抱える課題とは?詳しく解説してもらった。
【一覧で見る】吹奏楽コンクールの「意義」を構成する要素とは?
部活動地域展開を吹奏楽の視座で論じる記事も、3回目となった(1回目、2回目前編、2回目後編)。筆者はこれまで、自身の大学紀要を刊行したり、吹奏楽関連団体合同会議を主催するなど、早い時期から文化庁が発表した「部活動地域展開ガイドライン」の考察や対処への促進活動を展開してきた。
だが、物事はそう容易く進むことはなく、少子化のスピードが速まる社会において、「部活動の変革に対する適切な対応をまだ取れていない関係者が多数いる」という現実がより強調されるばかりのように感じられる。
このガイドライン自体は、法的拘束力のあるものではない。また、主に公立中学校を対象としているため、すべての学校種が強制的に従う必要があるわけではない。
そのため、例えば部活動に特色を持つ高校の活動を制限するものではなく、部活動の単位を維持したまま吹奏楽コンクール中心の活動を続けることを制限するわけでもない。また、吹奏楽部で指導し続けたいと望む顧問教員を強制的に引き離すような効力もない。
しかしながら、第1回・第2回の記事でも繰り返し論じているように、とにかく「少子化」なのである。文化庁がガイドラインを出していなかったとしても、早晩、現状の部活動体制を維持できない学校が大半を占めゆくことが明白ということだ。また、現時点で体制が維持できるところもいずれ「その日が来る」可能性が高いということでもある。