テレビ番組の改編期には、視聴者の期待に応えられなかった番組が無残にも打ち切られる運命にある。特にバラエティ番組においては、企画内容の急激な変更が打ち切りの「危険なサイン」とされることがある。その一つが「関東特集」だ。この現象について、テレビ解説者の木村隆志氏が分析している。TBS系で放送される『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』の2時間スペシャルが今回「関東で一番住みたい県はどこ?」というテーマを掲げているが、この企画には、業界内で密かに囁かれる番組打ち切りの兆候が表れているという。
TBS系『タミ様のお告げ』で放送される関東特集の紹介画像、番組打ち切りのサインか
『タミ様のお告げ』の変遷:コンセプトとの乖離
『タミ様のお告げ』の当初のコンセプトは、「世の中に聞いた忖度のないリアルな意見 =『タミ様のお告げ』こそあなたの未来を良くする一番の良薬!この番組は…明日の自分のために国民のホンネを聞いてみる日本一『余計なお世話』バラエティ!」というものだった。番組開始当初は、「芸能人ゲストにまつわるアンケートでランキングを発表していく」という内容を中心に展開されていた。
しかし、わずか数ヶ月でコンセプトと大きく異なる企画が目立つようになった。「関東で一番住みたい県はどこ?」というテーマに加え、「最も爆買いされている激安ローカルスーパーはどこ?」「驚愕の激安物件が続々!都心に通える広々物件も夢じゃない『今すぐうちの県においでよ』ダービー」といった内容は、本来の「国民のホンネを聞いて未来を良くする」という普遍的なテーマから乖離しているのは明らかだ。この短期間での企画の方向転換自体が、番組が試行錯誤を繰り返している証拠と言えるだろう。
放送ペースと企画内容から見る試行錯誤
『タミ様のお告げ』は3月24日に番組がスタートしたが、前回放送は7月28日、その前は6月23日と、放送ペースが不定期になりつつある。8月に至っては25日の放送が初めてであり、現在は月1回ペースの番組となっている。
過去の放送内容を遡ると、「カルディ、行列ラーメン…食の夏祭り」「芸能人リアル金銭感覚」「焼肉きんぐの常連タミ様が社員にモノ申す」「関西VS関東 大検証」など、多岐にわたるテーマが試されてきたことがわかる。これらの企画は、番組の方向性を模索する中で、様々な視聴者層へのアプローチを試みた結果と言える。しかし、一貫性のない企画の羅列は、番組が明確なターゲット層や柱となるコンテンツを見つけられていない現状を示唆している。
重要番組としての背景と業界の懸念
そもそも『タミ様のお告げ』は、前番組『THE MC3』が中居正広氏の不祥事や降板を受けてリニューアルした経緯を持つ。MCには東野幸治さんとヒロミさん、アシスタントには「好きな女性アナウンサーランキング」1位の田村真子アナを起用するなど、TBSがこの番組に大きな期待をかけ、重要なポジションと位置づけていたことは疑いようがない。
それだけに、業界内からは今回の「関東特集」に対し、「もう“関東”に行ったのか……」という驚きと落胆の声が上がっているという。この反応は、単なる企画変更以上の意味を持つ。
なぜ「関東特集」が“危険なサイン”とされるのか
テレビ業界において、番組が「関東特集」や特定の地域に特化した企画にシフトすることは、しばしば「危険なサイン」として受け止められる。その背景には、以下のような理由がある。
まず、全国的な規模で通用する普遍的なテーマや企画が枯渇し、番組が苦境に立たされている状況を示唆している。広い視聴者層にアピールできるコンテンツを生み出せなくなった際、制作側は手軽に取材しやすい「局のお膝元」である関東地方に焦点を当てることで、視聴率の回復や番組存続を図ろうとする傾向がある。これは、番組の訴求力が低下していることの裏返しとも言える。
次に、「激安ローカルスーパー」や「都心に通える激安物件」といった具体的な企画は、特定の地域や特定の興味を持つ層に限定されたニッチなアプローチであり、番組全体のターゲットを狭めてしまう可能性がある。このような企画は、一時的に特定の視聴者層を引きつけることはできても、長期的な番組の人気や評価には繋がりにくいとされる。
つまり、「関東特集」は、番組がアイデア不足に陥り、視聴率低迷を打破するための「最後の手段」として地域に特化したコンテンツに頼らざるを得ない状況を映し出していると解釈されるのだ。
結論
『1億2千万人アンケート タミ様のお告げ』は、番組スタートからわずか数ヶ月でコンセプトと大きく異なる企画を連発し、放送ペースも不定期になっている。特に「関東特集」への舵切りは、テレビ業界の識者から見れば、番組が苦境に立たされ、打ち切りが近いことを示唆する「危険なサイン」と受け止められている。豪華なMC陣を擁し、TBSが期待を寄せていた番組だけに、今後の動向が注目されるところだ。