クマによる人身被害が過去最悪ペースに
2025年もクマによる人身被害が相次いでいる。環境省によると、今年度の4月から7月までのクマによる人身被害者数は55人、うち死亡者は3人。過去最悪だった2023年度の同期間における被害者が56人、うち死亡者1人であったのとほぼ同等のペースで被害が起きているのだ。
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2023年度は、4月から翌年3月までに219人の被害者(うち死亡者6人)を出しているが、特に9月から被害が著しく増加し、10月の被害件数が統計のある2006年度以降で過去最多となっている。今年度も、これから更にクマによる被害が増える可能性を考慮しなければならないだろう。
8月には北海道斜里町の羅臼岳で26歳男性が襲われる
8月には、さらなる被害が起きてしまった。日本百名山の一つである羅臼岳を友人と登っていた東京都に住む26歳の会社員男性が、下山中の14日にクマに襲われて亡くなった。各社が報じた警察の発表によると、男性の死因は「全身多発外傷による失血」。遺体の全身に傷があり、特に下半身の損傷が激しかったという。
地元の北海道放送が報じた当時の様子からは、緊迫した状況が伝わってくる。同社によると、両太ももから大量に血を流しながらクマと格闘している被害男性に気づいた友人が、素手でクマを殴って追い払おうと必死に抵抗したものの敵わず、被害男性はクマによって茂みに引きずり込まれていったそうだ。
SNSでは「『羆嵐』を義務教育に」の声…一体どんな内容なのか?
このニュースが拡散されると、クマの恐ろしさを国民は知るべきだとして、「『羆嵐』を義務教育に」という声がSNSで見られるようになった。その恐ろしさは“トラウマを抱えるほど”と言われる『羆嵐』とは、どんなものなのだろうか。
1915年12月、北海道北西部の苫前(とままえ)村で10人の婦女子がクマに殺傷される“日本史上最悪の獣害”が発生した(死者7人、負傷者3人)。この「三毛別羆(さんけべつひぐま)事件」をもとに吉村昭が描いたドキュメンタリー長編が『羆嵐』(新潮社)だ。同作では、臨月の妊婦を含む女性や子供が次々と犠牲になっていく様子が克明に描かれている。
短期間のうちに7人の死者を出した人喰いヒグマの凶行とはどのようなものだったのだろうか? 以下、『羆嵐』をもとに引用・再構成してお伝えする。
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