「炭水化物は太る」は誤解?老けない体を作る「究極の主食」を医師が徹底解説

主食となる炭水化物は、糖質を含むため「太る」「老ける」といったイメージが強く、ダイエットの敵として敬遠されがちです。しかし、老化の原因物質(AGE)に関する研究で数々の成果を発表してきた昭和医科大学医学部の山岸昌一教授は、「炭水化物の中にも、体にプラスになるものと弊害になるものがある。主食(炭水化物)の“中身”を見極めることが最も重要だ」と指摘します。老けない体を作る上で、私たちはどのような主食を選べば良いのでしょうか。

「炭水化物は太る」説の真偽:医学論文が示唆する意外な事実

近年、糖質オフダイエットが一大ブームとなり、市場には糖質オフを謳う商品が溢れています。炭水化物は糖質と食物繊維から構成され、糖質は体内でブドウ糖に分解されてエネルギー源となりますが、余剰なブドウ糖は中性脂肪として蓄積され、肥満を招くため、糖質の摂取を控えるという考え方が広まりました。2017年には英医学誌「ランセット」が「炭水化物の摂取が増えると死亡リスクが上昇する」という論文を発表し、大きな話題を呼びましたが、この論文の解釈には注意が必要です。

2021年に日本抗加齢医学会学会賞を受賞した山岸教授は、この論文についてこう説明します。「確かに、全摂取カロリーの77%以上を炭水化物から摂取していた群で最も死亡率が高かったのは事実です。しかし、この群では脂肪摂取量が極端に少なく、経済的な理由から精製された炭水化物を中心とした栄養の偏った食事しか摂れなかった可能性が高い。そのため、感染症や呼吸器疾患など、栄養不良が原因とされる病気で死亡したと考えられます」。つまり、炭水化物を摂取しない人ほど死亡リスクが低下すると結論づけられたわけではなく、炭水化物の摂取比率が60%程度の群では、最も少ない群と比べて死亡率に大きな差は見られなかったのです。

なぜ「老けない主食」選びが重要なのか?AGEと肥満の関係

山岸教授の指摘するように、「同じ炭水化物でも、体に良いものもあれば弊害になるものもあります。主食(炭水化物)の中身を見極めることこそが最も重要」なのです。炭水化物は精製されるほど体内に吸収されるスピードが速くなり、血糖値が急上昇します。すると、血糖値を下げるインスリンの分泌が追いつかず、血中に糖が余る状態が生まれます。この余った糖は脂肪細胞に取り込まれて肥満につながるだけでなく、タンパク質や脂質と結びつき、「老化の原因物質(AGEs)」を発生させ、体内の老化を進行させてしまうのです。

肥満は、糖尿病や心血管疾患のリスクを高めるだけでなく、全身の炎症を引き起こし、老化を早めることが科学的に示されています。この観点からも、「老けない主食」として選ぶべきは、精製されていない玄米や全粒粉などの炭水化物であると言えるでしょう。これらは血糖値の急激な上昇を抑え、AGEsの生成を抑制する効果が期待できます。

健康的な食卓のイメージ画像。老けない体を作るための主食の選択を示唆。健康的な食卓のイメージ画像。老けない体を作るための主食の選択を示唆。

老けない体を作る「究極の主食」とは?食物繊維が鍵

肥満を防ぎ、老化を遅らせるためには、炭水化物の中でも特に「食物繊維が豊富な主食」を選ぶことが賢明です。食物繊維には、食後の血糖値の急上昇を穏やかにする働きがあります。これは、食物繊維が糖の吸収速度を緩やかにするためです。さらに、食物繊維は腸内の善玉菌のエサとなり、短鎖脂肪酸という物質を生み出します。この短鎖脂肪酸は、脂肪の蓄積を防ぐなど全身に良い影響を与え、結果として痩せやすい体質へと導く効果が期待されています。

管理栄養士の望月理恵子氏も、最新の食品成分表に基づき、主食の中で食物繊維が豊富な食品の重要性を強調しています。精製度の低い穀物や根菜類など、食物繊維を多く含む食品を積極的に取り入れることで、私たちは「太りにくく、老けにくい体」を維持できるのです。

まとめ

炭水化物は一概に「悪者」ではなく、その「中身」を見極めることが健康と老化防止の鍵となります。精製度の高い白米や白いパンではなく、玄米や全粒粉などの未精製で食物繊維が豊富な主食を選ぶことで、血糖値の急上昇を抑え、老化の原因物質AGEsの生成を抑制し、さらには肥満予防にも繋がります。日々の食卓で賢い主食選びを実践し、若々しく健康的な体を維持していきましょう。

引用・参考文献

  • 山岸昌一 昭和医科大学医学部教授のコメント
  • 望月理恵子 管理栄養士の協力
  • 英医学誌「ランセット」に掲載された論文(※1)