森山幹事長「ステルス辞任」の思惑:自民党参院選敗北後の政権運営を占う

自民党内では、石破茂首相(総裁)の辞意表明の時期が注目される中、森山裕幹事長の去就も大きな関心事となっています。しかし、森山氏が仮に辞任したとしても、その影響力は維持されるとの見方も浮上しており、「ステルス辞任」という指摘まで出ています。参院選での敗北という厳しい現実を突きつけられた自民党が、今後どのように政権運営を進めていくのか、森山氏の動向がその鍵を握ると言えるでしょう。

参院選総括と森山氏の辞任示唆

自民党は、参院選敗北を受けた総括を9月2日の会合でまとめ、党の両院議員総会に報告する予定です。この取りまとめの責任者は森山幹事長であり、報告後に自身の進退について言及することが見込まれています。政治部デスクによれば、「森山氏は参院選後に辞任を示唆する発言をしており、2日の総括後に正式に辞任を表明しても何ら不思議ではありません」とのこと。森山氏の存在なくして石破政権の運営は困難との指摘が根強く、その辞任は政権にとって相当な痛手となると見られています。

自民党幹事長の森山裕氏。参院選敗北後の党総括や政権運営においてその去就が注目されている。自民党幹事長の森山裕氏。参院選敗北後の党総括や政権運営においてその去就が注目されている。

「チームみらい」安野党首との会談の裏側

そうした状況の中、森山氏は8月28日、参院選で初当選した「チームみらい」の安野貴博党首と会談しました。この会談は、安野氏が自民党本部を訪れ、党首として挨拶に訪れた形が取られましたが、実際は森山氏による多数派工作の一環と見られています。現在の自公与党は衆参両院で過半数を割り込んでおり、議席確保は喫緊の課題です。政治部デスクは、「安野氏が訴えるテクノロジーを活用した政策は、既存の政治家がなかなか手を出せていない分野。安野氏側も与党と連携して政策を法律に落とし込みたいと考えており、両者にとってウィンウィンの関係」と指摘。安野氏を取り込んでもすぐに過半数割れが解消されるわけではありませんが、この会談は森山氏の積極的な多数派工作の姿勢を示すものと言えます。

80歳の大ベテラン、森山氏が握る「国対政治」のタクト

80歳を迎える森山氏は、2017年から4年以上にわたり党の国会対策委員長を務め、安倍・菅政権を支え、その期間は歴代最長を記録しました。昨年の総裁選でも、誰が総裁になっても幹事長は森山氏になるだろうと囁かれるほどの影響力を持っています。石破政権下では「影の首相」とも称され、政権運営の多くの部分を切り盛りしてきた実績があります。現在の坂本哲志国対委員長は存在感が薄く、野党側からは「頼りにならない」との声も聞かれるほどで、森山氏が実質的に国対委員長を兼務しているような状況です。たとえ幹事長を辞任しても、国対委員長や幹事長代行などの役職に収まる可能性もあり、通常であれば降格と見られる役職変更も、森山氏の場合、活動が制限されることはほとんどないでしょう。チームみらいの安野氏との会談も、今後も森山氏自身が国会対策を担う意欲の表れと見る向きもあります。衆参両院での過半数奪還が当面の目標であり、森山氏はそのタクトを握る覚悟だと考えられます。しかし、「国対政治」と呼ばれる水面下の協議ややり取りは国民には見えにくく、時代錯誤なものと見られがちであり、自民党が国民の支持を失った要因の一つともされています。自民党は生まれ変わった党の姿をアピールしたいところですが、森山氏は余人をもって代えがたい存在であり、党はそんなジレンマに置かれているのかもしれません。

自民党森山裕幹事長が鹿児島に所有する4階建ての邸宅。自民党森山裕幹事長が鹿児島に所有する4階建ての邸宅。

結論

自民党は参院選の敗北という重い課題に直面し、石破政権の命運と森山幹事長の去就が注目されています。森山氏が辞任する可能性は高いものの、その豊富な経験と「国対政治」における卓越した手腕は、党にとって依然として不可欠な要素であり、役職を離れても影響力を保持し続ける「ステルス辞任」が現実味を帯びています。彼の多数派工作の動きは、与党が直面する過半数割れという困難な状況を打開するための必死の試みですが、同時に国民の目に不えにくい「古い政治」との批判も招きかねないというジレンマを抱えています。

参考文献