しなの鉄道、115系運行情報公開中止 「撮り鉄」迷惑行為で

しなの鉄道(長野県上田市)は、多くの鉄道ファンに愛されてきた人気車両「115系」の運行予定表の公開を、2025年9月分から中止すると発表しました。一部の鉄道撮影愛好家、通称「撮り鉄」による公道での撮影妨害や私有地への無断侵入、さらには樹木伐採といった深刻な迷惑行為が相次ぎ、状況の改善が見られないため、同社はやむを得ず発表を取りやめることになりました。

懐かしの115系車両と毎月の情報提供

しなの鉄道が運行する115系車両は、国鉄時代から続く「湘南色」(緑とオレンジ)や「横須賀色」(クリーム色と青色)といった懐かしい車体カラーに加え、随時運行されるラッピング列車など、多彩な姿で多くの人々に親しまれてきました。しなの鉄道は、これらの貴重な車両の魅力を広く伝えるため、毎月公式ホームページ上で運行日時や行路を「『懐かしの車体カラー・ラッピング列車』車両運用行路」として公開し、多くの鉄道ファンから好評を博していました。

しなの鉄道の緑とオレンジ「湘南色」の115系車両しなの鉄道の緑とオレンジ「湘南色」の115系車両

度重なる撮影マナーの呼びかけと警告の背景

同社はかねてより、利用者の安全と地域住民の平穏な生活を守るため、鉄道写真の撮影マナーの向上を強く呼びかけてきました。具体的には、線路や踏切内での危険な撮影行為の禁止、沿線での田畑や宅地内といった私有地への不法侵入厳禁、そして法令遵守の徹底を求めてきました。さらに、「沿線の皆さまにご迷惑がかかる状況となった場合には、誠に遺憾ながら情報の掲出を取りやめる可能性がございます」と明記し、厳しい警告を発していましたが、残念ながら状況は改善されませんでした。

私有地侵入・樹木伐採が中止の直接的な引き金に

こうした度重なる注意喚起にもかかわらず、今回の運行情報公開中止の直接的な引き金となったのは、2025年8月上旬に長野県上水内郡信濃町で発生した深刻な事案です。北しなの線沿線において、一部の撮影者が地域住民の住宅敷地内に無断で侵入しただけでなく、庭先の樹木を無許可で伐採するという、極めて悪質な行為に及んでいたことが判明しました。この事案は、同月10日に信濃町の住民からしなの鉄道に直接連絡が入り、会社内部で詳細な調査と協議が行われました。

地域住民保護のための苦渋の決断

しなの鉄道は、8月に発生した由々しき事案を受け、社内で緊急協議を実施しました。その結果、これ以上の迷惑行為の発生を防ぎ、地域住民の安全と平穏な生活を確保するためには、運行情報の公開を中止する以外に選択肢はないという苦渋の決断に至ったと説明しています。同社は「大変残念ながら掲載を終了することにした」とコメントしており、長年ファンに提供してきた情報提供を中止せざるを得ない状況に、深い遺憾の意を示しました。今回の措置は、一部の無責任な行動が、多くの良識ある鉄道ファンと地域社会全体に多大な影響を及ぼす結果となりました。

結論

しなの鉄道による115系運行情報公開の中止は、一部の「撮り鉄」による度重なるマナー違反と、特に私有地への不法侵入および樹木伐採という悪質な事案が直接的な原因です。この苦渋の決断は、地域住民の安全と平穏な生活を守るためのやむを得ない措置であり、企業として社会的責任を果たす姿勢を示しています。今後、鉄道文化を健全に育んでいくためには、全ての鉄道愛好家が公共の秩序と法令を遵守し、地域社会との共存を意識することがこれまで以上に強く求められます。

参考資料