ウクライナのドローンアナリストが、ロシア軍が使用するデコイドローン「ガーベラ」から回収されたとみられる映像を公開し、国際社会に波紋を広げています。この映像は、中国の主要なテクノロジー拠点である深圳の北環路でテスト撮影された可能性が高いとされており、ウクライナ側が繰り返し指摘してきた中国企業によるロシアへの重要な電子部品供給疑惑が再び浮上しています。この発見は、ウクライナ紛争におけるサプライチェーンの複雑さと、国際的な技術移転の監視の重要性を改めて浮き彫りにしています。
撃墜ドローン「ガーベラ」から回収された深圳の映像
この映像は、ウクライナの著名なドローン専門家であるセルヒイ “フラッシュ” ベスクレストノフ氏が2025年8月31日に公開したものです。彼はウクライナ戦争における無人システムをテーマにした人気テレグラムチャンネルを運営しており、メディアでも広く知られています。映像が回収されたとされる「ガーベラ」ドローンは、イラン製の自爆型ドローン「シャヘド」を模倣した、ロシア製の長距離デコイ(おとり)ドローンとして設計されています。Business Insiderは、この映像が実際にガーベラから撮影されたものかについて独自に確認するには至っていませんが、公開された情報は精査が進められています。
ウクライナ当局者がロシアのデコイドローン「ガーベラ」の残骸を調査する様子。このドローンから中国・深圳の映像が発見され、ロシアへの電子部品供給問題に注目が集まっている。
映像の舞台は、中国本土の検索エンジンである百度(Baidu)の地図や衛星機能を用いた分析により、深圳の北環路であることが特定されました。この映像について最初に報じたウクライナのオープンソース地理情報分析グループ「Cyber Boroshno」は、映像の角度から、北環路沿いに建つ高層オフィス複合施設「奥特科興サイエンスパーク」から撮影された可能性が高いと指摘しています。
映像に捉えられた深圳の夜景と詳細分析
公開された映像の一つでは、身元不明の人物が高層ビルから夜の北環路を見下ろし、窓に向けてカメラを動かしている様子が映し出されています。カメラが北環路にズームインすると、個々の車両を正確に捉え、黄色や白のインジケーターで強調表示する機能が確認できます。別の映像では、北環路に合流する車両をカメラが検知し、同様に強調表示する様子が記録されており、高度な追跡技術が用いられていることが示唆されます。これらの特徴は、ドローンに搭載される監視カメラの性能をテストしている状況を想起させます。
中国企業ViewPro製カメラ「A40 Pro」の類似性
ベスクレストノフ氏は、ガーベラに取り付けられていたとされるカメラの画像も公開しました。このカメラは、深圳に拠点を置く中国企業ViewProが製造する360度40倍光学ズームカメラ「A40 Pro」に酷似しているとされています。ViewProの公式サイトによると、同社の製品は「ドローン用ジンバル、ペイロード、革新的なドローンアクセサリー」に重点を置いており、A40 ProはAIを用いて目標を追跡する能力を持つと宣伝されています。ViewProのオフィスは深圳ハイテク産業パーク内にあり、前述の奥特科興サイエンスパークから約1.2キロの距離に位置しています。現時点では、この企業がロシア軍と直接的に関与しているのか、あるいはA40 Proが別の組織によって購入され、その後ロシアに供給されたのかは明らかになっておらず、Business Insiderのコメント要請にもViewProからの回答は得られていません。
高まる中国の電子部品供給への懸念
今回の映像発見は、ウクライナがこれまで繰り返し行ってきた、中国企業がロシアに先端兵器や弾薬に不可欠な電子部品やチップを供給しているという非難の文脈の中で公開されました。ロシアが西側諸国からの制裁を受け、軍事技術のサプライチェーンに課題を抱える中、中国からの技術や部品の流入は、ウクライナ紛争の長期化や国際秩序に大きな影響を与える可能性があります。今回の発見は、国際的な制裁体制の実効性と、軍民両用技術の管理の難しさを改めて浮き彫りにし、各国政府や国際機関によるより厳格な監視と対応が求められる状況と言えるでしょう。
結論
ロシア製ドローンから中国・深圳でテスト撮影されたとみられる映像の発見は、ウクライナ紛争における中国の潜在的な役割に関する議論を再燃させています。この情報は、ロシアの軍事サプライチェーンにおける電子部品の供給源、特に中国企業の関与に新たな疑問を投げかけるものです。国際社会は、情報の透明性を高め、このような技術が国際法に反する形で使用されることを防ぐため、より一層の協力と検証を進める必要があります。
参考文献
- Matthew Loh. (2025, September 7). ウクライナ、ロシア製ドローンから中国・深圳で撮影された映像を発見し部品供給を非難. Business Insider Japan. https://news.yahoo.co.jp/articles/30895c5b37214cb767bb18ba6b5cf8cc3597d477