高市首相の外交「大成功」の裏に潜む国内政治の難題:日米首脳会談の代償

高市早苗氏が首相に就任して間もなく迎えた、1週間余りにわたる首脳外交は、国内外で同首相の評価を急上昇させる「大成功」として注目されています。特にドナルド・トランプ大統領との日米首脳会談は、高市政権周辺から「満点以上の120点」とまで絶賛されました。しかし、この華々しい外交成果の裏側では、国内政治における深刻な「時限爆弾」がカウントダウンを始めており、高市首相の政権運営は困難な課題に直面しています。自民党内からも、早計な衆院解散は「負ければ首相退陣」につながりかねないとの悲観論が広がる中、首相自身も「経済最優先」と慎重姿勢を崩していません。

「満点以上」と評価された日米首脳会談の背景

高市首相にとって、10月21日の政権発足からわずか数日での国際舞台は、極めて重要な機会でした。首相指名の前後から外務省幹部らと緊急協議を重ね、持ち前の勉強熱心さで準備に没頭していたと官邸筋は明かしています。その中でも、高市首相が「最重要・最優先課題」と位置付け、国際的評価を確実にするための鍵と判断していたのが、ドナルド・トランプ大統領との日米首脳会談でした。この会談の成功は、高市政権の外交手腕を内外にアピールする上で不可欠とされていました。

日米首脳会談で握手する高市早苗首相とドナルド・トランプ前大統領。高市政権の外交における最重要課題を象徴する一枚。日米首脳会談で握手する高市早苗首相とドナルド・トランプ前大統領。高市政権の外交における最重要課題を象徴する一枚。

臨時国会を待ち受ける経済・財政の難問

華やかな首脳外交が終わり、高市政権を待ち受けるのは難題山積の臨時国会です。日米首脳会談で約束された「防衛費増額の大幅な前倒し」は、その財源確保の見通しが立っておらず、国内財政に大きな負担をかけることが懸念されています。さらに、国民が喫緊に求める「物価高対策」も、急速な円安の影響により実現が困難な状況にあります。円安の加速は輸入物価を押し上げ、国民生活を圧迫し続けており、効果的な対策が求められる一方で、その手立ては限られています。これらの経済・財政問題は、高市政権の支持率を左右する重要な要素となるでしょう。

連立維持と政権安定化への道筋

高市政権の安定化にとって、日本維新の会との連立維持は不可欠です。しかし、その大前提である「衆院定数1割削減」を巡っては、関連法案の早期国会提出すら危ぶまれる状況だと自民党の国対担当者は指摘しています。仮に「自維連立」が成立したとしても、衆参両院で少数与党である現状は変わらず、高市首相が目指す「政権安定化」は「言うは易く行うは難し」なのが自明の理です。政権を取り巻く厳しい環境に対し、高市首相が現実的に対処できるかどうかが、今後の政権運営の鍵となるとの見方が広まっています。

高市首相の首脳外交は確かに「大成功」を収め、国際的な評価を高めました。しかし、その一方で、国内では防衛費増額の財源問題、物価高対策の困難、そして連立維持の前提となる衆院定数削減の遅れといった、喫緊の課題が山積しています。これらの内政問題に現実的に、かつ効果的に対処できるかどうかが、高市政権の命運を左右する正念場となるでしょう。

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