日本全国で深刻化するクマ問題:過去最多の捕獲数と人身被害の現状

「どれだけいるんだ。本当に」――。狩猟免許を持つ俳優の松山ケンイチ氏がYouTubeで漏らしたこの言葉は、日本全国で深刻化するクマの大量出没と、それに伴う人身被害の危機的状況を象徴しています。森林が国土の約7割を占める日本では、近年、クマの個体数増加と分布域の拡大により、人とクマの生息域の境界が曖昧になりつつあります。エサとなるドングリなどの大凶作が重なる東北地方では、特にクマが人里に出没する行動に拍車がかかり、住民の不安が高まっています。

クマ出没と人身被害の深刻な現状

今年のクマによる人身被害は、過去最悪のペースで推移しており、事態は緊急性を増しています。原因は明らかで、ツキノワグマなどの個体数の急増と、彼らの主要なエサであるドングリなどの実りの大凶作が重なり、食料を求めてクマが人間の生活圏に深く侵入しているためです。この結果、今年度のクマの捕獲数(大半が殺処分)は、過去最多を記録した2023年度の約7700頭を上回るとの見方が強まっています。

20年以上にわたりクマの生態を研究する兵庫県立大学の横山真弓教授は、昨年は秋田県が特に深刻だったものの、今年度は被害が多発する地域が各地に拡大していると指摘。捕獲数は過去最多を更新し、「8000頭から1万頭程度に達する可能性が高い」と警鐘を鳴らしています。

人身被害が過去最悪ペースで増加する中、日本の森林で目撃されるクマ人身被害が過去最悪ペースで増加する中、日本の森林で目撃されるクマ

「災害級」の事態と地方自治体の対応

このような状況を受け、秋田県の鈴木健太知事は10月14日、クマの大量出没を「フェーズはもう変わった」と述べ、その深刻さを強調しました。同月25日には小泉進次郎防衛相と会談し、クマの駆除活動への側面支援を要請。もはや災害級の緊急事態であるとの認識を示しました。秋田県では、今年度の有害駆除によるクマの捕獲数がすでに1000頭を超え、2023年度を上回るペースで増え続けています。

個体数管理の遅れが招いた東日本の課題

横山教授は、実は5年前にもクマの個体数を減らさないと深刻な事態になると警鐘を鳴らしていました。クマの問題は2010年ごろから続く課題であり、その対応には地域差があるといいます。西日本では10年前から個体数管理を実施し、個体数の増加を効果的に抑制しています。一方、東日本では予算の問題などもあり、個体数管理が遅れてしまったことが、現在のクマ個体数増加の背景にあると分析しています。この地域的な対応の差が、現在の東日本における深刻なクマ問題に繋がっていると考えられます。

結論

日本の各地域で深刻化するクマの大量出没と人身被害は、過去にないレベルに達しています。個体数の急増とエサ不足という複合的な要因が、クマを人間の生活圏へと押し出し、緊急の対策が求められています。兵庫県立大学の横山教授が指摘するように、東日本における個体数管理の遅れが現在の危機を招いた一因であり、今後、地域間の連携強化と予算配分の見直しを通じて、科学的根拠に基づいた適切な個体数管理を全国規模で推進することが急務と言えるでしょう。

参考資料