渋谷ハロウィン変貌:厳戒態勢下の路上と若者の「つまらない」声、クラブへのシフト

「ゴーゴーゴー! ウォーク!」「まっすぐ歩けって言ってんだろうが!」――今年も自治体と警察による厳戒態勢が敷かれる中、渋谷はハロウィン当日を迎えた。日付が変わった深夜2時30分頃、スクランブル交差点では泥酔した外国人に対し、警官が怒号を飛ばす場面も見られた。近年恒例となった「渋ハロ」は、人気キャラクターの仮装者が溢れ、華やかな盛り上がりを見せる一方で、消防車が出動する騒ぎも発生。その光景は、渋谷のハロウィンが持つ二面性を象徴していた。

渋谷ハロウィン変貌:厳戒態勢下の路上と若者の「つまらない」声、クラブへのシフト渋谷ハロウィンで賑わうスクランブル交差点に消防車が出動する様子渋谷ハロウィンで賑わうスクランブル交差点に消防車が出動する様子

しかし、渋谷の中心地である「センター街」に目を向けると、仮装を楽しむ日本人の姿はまばらだ。今年の「渋ハロ」事情は、これまでとは異なる変化を見せているようだ。

厳戒態勢下の渋谷:規制強化と逮捕事例

ハロウィン取材を担当する民放社会部記者によると、昨年は区の強い呼びかけもあり、渋谷は比較的落ち着いた様子だったという。今年は2万人近い人出が見込まれていたが、雨の影響もあってか、実際の人出はそこまで多くなかった。

それでも、いくつかの小競り合いが発生した。当日夜には、警戒にあたっていた機動隊員に対し、男女2人が公務執行妨害で現行犯逮捕されている。両名ともに酒に酔っていた可能性が指摘されている。

記者が取材のため渋谷を訪れたのは、10月30日の午後10時頃だった。そこでまず感じたのは、人流規制の「本気度」だ。例年最も混雑するセンター街付近では一方通行が徹底され、立ち止まるとすぐに警官から注意を受ける。無理やりUターンを試みた酔客のサラリーマンを、警察官がタックルのような勢いで制止する場面も目撃された。

さらに、昨年のハロウィン前から施行されている「路上飲酒禁止条例」の影響も大きい。この日も、コンビニエンスストアなどでアルコール類は一切販売されていなかった。センター街を歩く仮装者のほとんどが外国人であるという状況も、規制強化の裏付けと言えるだろう。

日本人はどこへ?「センター街はもうつまらない」

では、仮装を楽しみたい日本人の若者はどこへ向かったのだろうか。その答えは、クラブにあった。

午後10時頃、ホテルやクラブが立ち並ぶ円山町エリア。〈女性優先〉や〈男性〇〇円ファストパス〉といった謳い文句のクラブには、開店前にもかかわらず、日本人の若者が長蛇の列を作っていた。近くでショットやフランクフルトを露天販売していた飲食店従業員はこう語る。

「去年もわりと早い時間、クラブが開く21時頃から人がごった返していましたね。話を聞いていると、お酒も買えないから『クラブ直行』という子がほとんどです」

実際にクラブの入場列には、100人近い人々が並んでいた。その中の20代女性は、「センター街、もうだるいっすもん」と本音を漏らした。

「センター街はもう、お酒も飲めないしつまらない。写真撮ろうとして立ち止まると、すぐに(警官に)何か注意されるし。行く意味なくない?って感じ(笑)。酔っ払っている外国人も多いから。だったらもう最初からクラブに入っちゃった方が楽しいかなって。ハコの中だったら、『迷惑ハロウィン』じゃないでしょ」

この発言は、渋谷のハロウィンを取り巻く環境の変化と、それに対する若者たちの適応を明確に示している。

まとめ

今年の渋谷ハロウィンは、過去の混乱を受けて厳戒態勢が強化され、路上での飲酒禁止や厳しい人流規制が徹底された。これにより、スクランブル交差点では警官の怒号が響き、一部では公務執行妨害による逮捕者も出た。一方で、仮装した日本人の姿はセンター街から消え、彼らは「路上はつまらない」と語り、クラブなどの屋内施設へとその活動の場を移していた。この変化は、ルールと秩序の中で新しい楽しみ方を見つけようとする日本の若者文化の適応を示唆しており、今後のイベント開催における街と参加者の関係性を考える上で重要な示唆を与えている。

参考資料