中国の薛剣駐大阪総領事がSNSプラットフォームXに投稿した内容が、国内外で深刻な波紋を広げ、日中関係に新たな緊張をもたらしています。日本の高市早苗首相(当時)の発言を引用し、台湾有事を巡る「存立危機事態」認定の可能性に触れた記事に対し、薛総領事が「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない。覚悟ができているのか」と過激な表現で投稿したことで、外交問題に発展しています。
物議を醸す発言と台湾、公明党からの批判
薛剣総領事の問題の投稿は翌日には削除されたものの、その内容は瞬く間に拡散され、各国関係者からの批判が相次ぎました。台湾の国家安全会議秘書長であるジョセフ・ウー氏は、この「恐喝的な言論」が「外交官としての一線を著しく越え、現代の文明社会において到底容認できるものではない」と強く非難しました。公明党の伊佐進一前衆院議員も自身のXで、「日中に意見の相違があれど、激しいつばぜり合いを重ねながら、それぞれの国益のためにギリギリの決着点を探る。これが、私も北京で体験してきたリアリズムの外交でした。でも、これは単なる誹謗中傷です」と苦言を呈し、相手国への敬意が欠如していると指摘しました。
中国外務省の擁護と日本国内からのさらなる反発
一方で、中国外務省の林剣副報道局長は記者会見で、高市氏の答弁について日本側に厳正な申し入れを行い抗議したことを報告しました。さらに中国外務省は、薛剣氏の個人発言は「台湾を中国領土から分離し、武力による台湾海峡への介入を扇動する、誤った危険な言論に向けられたもの」であり、「一部の日本の政治家やメディアがこれを意図的にあおり、世論を混乱させ焦点をそらそうとしているのは無責任である」と述べ、薛総領事の姿勢を擁護しました。この中国側の対応を受け、日本国内の著名人からはさらなる批判の声が上がっています。高須クリニックの高須克弥院長は、この発言を「宣戦布告だな」と強い怒りとともに受け止めました。
高市早苗総理大臣、就任後初の会見(2025年10月21日)
橋下徹氏の疑問と日中関係の行方
政治評論家として活動する橋下徹氏は、薛総領事に対する「ペルソナノングラータ(好ましからざる人物)」の発動がなされない高市政権の対応に疑問を投げかけました。「あれだけ中国に勇ましい高市自民維新政権でも、この事例ですらペルソナノングラータの発動をやらないのか。また発動しないことに保守派は批判しないのか。誰が首相になってもこれが現実」と述べ、日本の外交における現実的な制約を示唆しました。
10月31日には、一時は開催が危ぶまれた高市首相と中国の習近平国家主席による日中首脳会談がアジア太平洋経済協力会議首脳会議に合わせて実現したばかりでした。日中関係の改善が期待されていた矢先に、薛剣氏の今回の投稿をきっかけに再び緊張感が走り、今後の高市政権の外交手腕が問われる局面となっています。





