爆弾を仕組んだポケベルで4000人の敵を爆殺…イスラエル最強諜報機関・モサドが10年かけて行った秘密工作


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■50年前の失敗から学ばなかったイスラエル

 【小泉】2023年10月のハマスによるイスラエルへの大規模な奇襲攻撃では、多数の一般市民が凄惨に殺害され、200人以上が人質として拉致されるなど、イスラエルにとって建国以来最大級の戦争被害とも言われます。卓越したインテリジェンス体制を誇るイスラエルがなぜ、ハマスの攻撃を未然に防げなかったのでしょうか。

 【小谷】これは1973年の第4次中東戦争開始前夜と同じ構図です。第四次中東戦争でもイスラエルがエジプト・シリア軍に奇襲をかけられたわけですが、この戦争から1年後、イスラエルにおいて「なぜ敵の攻撃の兆候を見逃したのか」という調査がなされました。

 そのレポートによると、「イスラエル側に過信があった」というのです。「イスラエルは第3次中東戦争においてエジプト・シリア軍を完膚なきまでに叩きのめした。ゆえに当分は攻めてくるはずがないという思い込みがあった」ということです。

 当時イスラエルのアマン(参謀本部諜報局)は、シリア・エジプト軍がイスラエル国境にまで集結しているという情報をつかんでいました。アメリカ側も同様の兆候を捉えており、イスラエル側に警告していた。にもかかわらずイスラエルは「これは演習だ。実際の侵攻はもっと先だ」と判断し、油断していたところへ奇襲攻撃を仕掛けられた。

 情報はあったけれども、深刻に受け止められていなかった、というのが実状だったのです。

■核戦争になりかけたNATO演習

 【小泉】部隊の集結などたしかに外形的なことはわかります。ですが、それをもって何をしようとしているかは、最終的には指導者の胸の内の話になる。ロシアのウクライナ侵攻前夜もそうです。そこを読み解くのが非常に難しい。

 1983年11月、米ソ間で核戦争寸前まで緊張が高まった「エイブル・アーチャー83演習」があります。

 これはNATOが行なった核兵器使用に至るシミュレーション演習で、大規模な軍事演習を実施することはNATO自身も公表していたのですが、ソ連は「本当に核攻撃の準備をしているのではないか」と誤解した。本当に演習なのか、核戦争の準備なのかは外形的に区別がつかないのです。

 ロシアのユーリ・アンドロポフ書記長は迷った末に、RYAN(リヤン)作戦に乗り出します。RYANというのは「ロケット・核攻撃」を意味するロシア語の頭文字を取ったものです。

 世界中のKGB(ソ連国家保安委員会)とGRU(軍参謀本部情報総局)に、血液備蓄の増加、電力需要の急変、政府要人や家族らの国外退避や地下施設移動などの核戦争の兆候がないか、監視・警戒態勢の強化を命じたのです。

 いくら西側が「これは演習です」と言っても、実際に相手の考えていることはわからない。情報機関が可能な限り情報をつかんでも、どうしてもわからない部分が残ってしまうわけです。



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