フワちゃんプロレス復帰の勝算と不安要素:「ヒール転生」は吉と出るか凶と出るか?

活動休止中だったタレントのフワちゃん(31)が11月7日、SNSを更新し、プロレスでの復帰を発表しました。近年、芸能界では「復帰シーズン」ともいえる現象が続いており、松本人志氏や沢尻エリカさん、三代目J SOUL BROTHERSの今市隆二さんなど、一時活動を休止していたタレントが次々と表舞台に戻ってきています。もはや「炎上も一巡すればリスタート」は、芸能界の新たな慣例となりつつある中、フワちゃんもこの流れに乗った形です。しかし、彼女の選んだ復帰の道は、これまでとは一線を画す異例なものとして注目を集めています。

異例の復帰劇:なぜプロレスを選んだのか

フワちゃんの復帰方法は、一般的な謝罪会見やYouTubeでの「反省動画」といった形式とは全く異なります。彼女が選んだのは、プロレスのリングの上という予想外のフィールドでした。これは、これまでの言動で注目を集めてきたタレントが、肉体的なパフォーマンスを見せる「戦う」世界で「体で語る」という、まさに大胆な方向転換と言えるでしょう。かつて筆者は、フワちゃんがプロレス企画で見せたひたむきな姿こそ視聴者が求めるものであり、その点をフワちゃん自身が誤解しているのではないかと指摘しました。しかし、型破りな衣装や奔放な発言も、見方を変えれば「観客のためのショー」であったとすれば、本物のリングで闘うことは、ある種の必然性を持っていたのかもしれません。

「ヒール転生」シナリオの可能性と世間の反応

フワちゃんのプロレス復帰に対する世間の反応は賛否両論に分かれています。「面白そう」と期待する声がある一方で、「プロレスを復帰理由に使うな」といった反発や、「結局また目立ちたいだけでは?」という根強い批判も存在します。しかし、こうした批判的な声こそが、プロレスにおけるヒール(悪役)の宿命です。ブーイングされないヒールに存在価値はなく、観客の感情を揺さぶることがエンターテインメントの根幹であるならば、嫌われることすら戦略のうちと言えます。その点、フワちゃんの良くも悪くも「ウザ絡み」が過ぎるキャラクターは、ヒールとしての素質があるとも見ることができます。

フワちゃんがプロレスラーの衣装を身につけ、鍛えられた太ももを見せているフワちゃんがプロレスラーの衣装を身につけ、鍛えられた太ももを見せている

ただし、リングの上はテレビの「ツッコミ待ち」とは異なり、真剣勝負の世界です。フワちゃんがどこまで本気を見せられるかが問われます。初戦で「痛い目を見る」姿を見せれば、世間の溜飲も少しは下がり、そこにこそ再生のチャンスを見出しているのかもしれません。

スターダムでの課題:アドリブと協調性の壁

一方で、不安要素も残ります。彼女が参戦するとされるスターダムのプロレスは、タッグ戦が中心であり、パートナーとの呼吸や仲間同士の信頼が何よりも重要視されます。つまり、「誰と組むか」「どう息を合わせるか」が最初の大きな試練となるでしょう。相手の話を遮り、ハイテンションで押し切って笑いを取るフワちゃんのスタイルは、テレビでは成立しても、リング上では危険を伴います。プロレスは、掛け合いと支え合いの上に成り立つ「協働のエンターテインメント」であり、「自分が主役」という意識が抜けきらないままだと、パートナーに怪我をさせてしまう可能性すらあります。

過去には、「まつもtoなかい」でのローラさんとの対談で、同じ「タメ口キャラ」として引き合わされながらも、フワちゃんのペースに巻き込まれまいと淡々とした態度を取り続けたローラさんが批判を浴びる一方、仕掛けた側のフワちゃんのアドリブの弱さが露呈し、放送事故レベルとまで言われた一件がありました。また、自分のペースを乱されることには敏感に反応し、ファンに対しても高圧的な態度を取ったり、自身のミスで飛行機に乗り遅れた際にスタッフに逆ギレしたりするなど、一般人に対する振る舞いが問題視されたことも明らかになっています。

「マイペース」が通用しないプロレスの世界

フワちゃんが以前語った「友達と仕事するのが一番」という言葉は、裏を返せば「自分のペースを崩すことなく、メリットをもたらしてくれる相手としか組まない」という身勝手さを含んでいると解釈できます。しかし、スターダムのリングでは、人気や知名度ではなく、信頼と連携が最も重要です。メリット計算ではなく、「お互いを信じ合う心」が求められる世界と言えるでしょう。

これまでは「疲れているのだろう」「あれもキャラの一部」と許されてきたフワちゃんの「マイペース」や「思ったことをすぐに口や顔に出す」という持ち味は、勝負の世界では通用しません。また、プロレスラーの活動は試合だけでなく、物販やプロモーションなど、アイドル顔負けの丁寧なファンサービスが求められる場面も多々あります。つまり、これまで彼女が武器としてきた個性が、今後は弱点となる可能性を秘めているのです。こうした「不自由」な環境に、フワちゃんは果たして耐えられるのでしょうか。プロレスラーとしての挑戦は、彼女の芸能人生において最大の試練となるかもしれません。

参考文献