映画「国宝」が興収170億円突破、実写邦画歴代1位へ迫る快進撃

吉沢亮主演映画「国宝」が、公開から158日間で観客動員数1207万人、興行収入170億円を突破し、日本実写邦画の歴史に新たな1ページを刻もうとしている。これまでの歴代1位である「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(2003年、173.5億円)の記録更新が間近に迫っており、その快進撃は業界内外で大きな注目を集めている。日本の伝統芸能である歌舞伎をテーマにした本作が、なぜこれほどまでの大ヒットを記録しているのか、その背景には深い理由がある。

「踊る大捜査線」超え確実視、異例のヒットの背景

映画「国宝」の配給元である東宝は、既に1ヶ月以上前から本作が「踊る大捜査線 THE MOVIE2」の記録を塗り替えると予測していたという。しかし、そのヒットの質は大きく異なる。「踊る大捜査線」がフジテレビ製作という背景のもと、織田裕二や柳葉敏郎といった豪華キャストを起用し、情報番組からバラエティーまで多岐にわたる番宣を繰り返し行うことで観客を動員したのに対し、「国宝」はテレビ局が製作に関わっておらず、よりオーガニックな形で成功を収めている。歌舞伎というニッチなテーマながら、当初業界内で囁かれていた「興収10億円程度」という予想を大きく覆し、空前のヒットを記録しているのだ。

映画「国宝」で主演を務める吉沢亮映画「国宝」で主演を務める吉沢亮

歌舞伎の世界を描く「国宝」の魅力と共感の広がり

作家・吉田修一氏が3年間かけて歌舞伎の黒衣として舞台や楽屋、役者を取材し書き上げた傑作小説を実写化した「国宝」。任侠の一門に生まれながらも、抗争で父を失い著名な歌舞伎俳優に引き取られた主人公(吉沢亮)が、50年にわたる役者人生を歩む姿を描いている。歌舞伎を題材にした映画は前例が少なく、その未知なる魅力が観客を引きつけている。観客は、主人公の波乱に満ちた人生と日本の伝統文化である歌舞伎の世界に深く引き込まれ、自己の人生と重ね合わせることで強い共感を覚えているという。

世代を超えた観客動員とリピーター現象

「国宝」の客席では、特に高齢者層が目立つと報じられている。彼らは歌舞伎という伝統文化への再認識や、主人公の50年にわたる人生を通して自身の半生を振り返るという観賞姿勢を持っているようだ。一方で、SNSでの高評価や感想がきっかけとなり、若年層の来場者も増加しており、幅広い世代を巻き込んだ集客構造が形成されている。一度鑑賞した人々が、その感動や映像の美しさを再度味わうために劇場に足を運ぶリピーターが急増していることも、異例のロングランヒットを支える大きな要因となっている。観客が「誰かに勧めたい」と感じる共感が、口コミを通じてさらなる観客動員に繋がっていると言えるだろう。

結論

映画「国宝」は、歌舞伎という独自のテーマを扱いながらも、その普遍的な人間ドラマと映像美で観客を魅了し、実写邦画の興行収入記録を塗り替える勢いで快進撃を続けている。世代を超えた共感とリピート鑑賞という現象は、単なる映画のヒットに留まらず、日本の文化コンテンツの新たな可能性を示唆している。今後の更なる記録更新に期待が集まる。


Source: Yahoo!ニュース