NHK紅白歌合戦とタトゥー:出演者の「身なり」を巡る議論と公共放送の対応

今年も残すところあとわずかとなり、大晦日の風物詩である『第76回NHK紅白歌合戦』の出場アーティストが11月14日に発表されました。初出場組からはHANA、ちゃんみな、FRUITS ZIPPER、韓国の4人組ガールズグループaespaなど10組が選出され、常連組からは福山雅治、MISIA、石川さゆりといった盤石の顔ぶれが揃いました。若者から人気を集めるアーティストが多数出場する一方で、最近では出演アーティストの服装とは異なる「身なり」、特に身体に入ったタトゥーが話題になることが少なくありません。

タトゥーを持つアーティストたちと「落選」の憶測

紅白歌合戦の出場選考は、その年の活躍ぶり、世論の支持、そして番組の企画・演出という3点を中心に総合的に判断されると言われています。しかし、シンガーソングライターの優里さん(31)は2022年に「ドライフラワー」が大ヒットし、出場が確実視されながらも、同年の紅白には一度も出場していません。また、毎年出場していたYOASOBIが昨年出場せず、今年はボーカルのikuraさん(幾田りらさん)がソロで初出場することになりました。優里さんの右腕にはびっしりとタトゥーが、YOASOBIのコンポーザーであるAyaseさん(31)も首から手の甲まで上半身にタトゥーが入っているため、ファンの間では「タトゥーが落選理由ではないか」という憶測が飛び交っています。

実際、幾田さんのソロ出場に関しても、X(旧Twitter)上では「Ayaseのタトゥーが原因なのだろうか?寂しい」「AYASEのタトゥーが多すぎて紅白出れない説」といったファンの心配の声が多く見られました。さらに、紅白常連のシンガーソングライター・あいみょんさん(30)も今年8月にファッション誌で腕のタトゥーが判明し、大きな注目を集めたことから「今年の紅白はどうなるのか」と懸念する声も聞かれました。(テレビ局関係者)

紅白歌合戦を巡るタトゥーの議論紅白歌合戦を巡るタトゥーの議論

隠されるタトゥー:アーティストと番組側の配慮

しかし、実際にはアーティストの身体にタトゥーが入っていても、衣装やテープなどで極力目立たないように工夫されているケースがほとんどです。例えば、YOASOBIのAyaseさんは2023年の紅白では黒い長袖シャツを着用し、第一ボタンまできっちり留めていました。2024年に紅白初出場を果たし、日本中を盛り上げたB’zのボーカル・稲葉浩志さん(61)も例外ではありません。ファンの間では背中や二の腕にタトゥーが入っていることで知られていますが、紅白では長袖シャツを着用し、タトゥーが露出することはありませんでした。

このようなアーティストによる配慮は、紅白以外の番組でも見られます。2016年1月放送の『あさイチ』に出演したディーン・フジオカさん(45)は、プライベートを紹介するVTRの中でタトゥー部分にテープを貼っていたことが話題になりました。また、今年8月放送のNHKスペシャル『戦火の時代に紡ぐ歌 PASS THE MIC』では、ヒップホップミュージシャンのZeebraさん(54)とZORNさん(36)が出演。歌唱時、Zeebraさんが半袖だったのに対し、両腕にびっしりとタトゥーが入っていることで知られるZORNさんは長袖シャツを着用し、映り込んでしまう部分を最低限に抑えた可能性が考えられます。

一方で露出されるケースも:多様化する対応

その一方で、隠すことなくタトゥーが見えていたという例もあります。NHK連続テレビ小説『あんぱん』の主題歌を担当し、今年の紅白出場が有力視されているRADWIMPSのボーカル・野田洋次郎さん(40)は、二の腕にタトゥーが入っています。しかし、10月にNHKで放送された特別番組『RADWIMPS 20th YEAR SPECIAL』では、歌唱時にタンクトップを着用していたため、タトゥーがはっきりと見えていました。これらの例から見ても、番組によってタトゥーへの対応はさまざまなようです。

変化するタトゥー観とNHKの見解

かつての日本では、「入れ墨=反社会的勢力」というイメージが定着しており、タトゥーに対しても「ガラが悪い」と感じる人が少なくありませんでした。しかし、現在ではタトゥーを入れる理由は個性や自己表現など人それぞれであり、カジュアルに入れる人も増え、ファッションの一部として捉える若者も多くいます。時代の流れとともにタトゥーに対する価値観も変化しており、公共放送であるNHKだからといって「絶対NG」としているわけではないようです。実際、今年の紅白歌合戦初出場者であるちゃんみなさんやaespaのジゼルさんもタトゥーを入れており、タトゥーの有無が選考基準ではないと考えられます。(テレビ局関係者)

本誌が12日にNHKに取材し、タトゥーの有無が出演可否の判断材料となるか、またタトゥーを隠すよう局側から要請しているのかなどを質問したところ、13日に広報局から文書で回答がありました。それによると「出演者の選定にあたっては、番組ごとにその都度、自主的に判断しています。タトゥーについては個人の嗜好との関係もあり、一律の対応策を示すことは難しいですが、タトゥーをことさら強調することは避けるよう心がけています」とのことです。

つまり、NHKは映像の中でタトゥーが目立たないように配慮はしているものの、一律の禁止規定はないということです。タトゥー文化が日本でも広がりを見せる中で、公共放送を含むテレビ局の方針も今後さらに柔軟になっていくのか、注目されます。