高市早苗首相による「台湾有事」および「存立危機事態」に関する発言が、日中関係をかつてないほど悪化させています。しかし、驚くべきことに、その直後の世論調査では高市内閣の支持率が上昇するという特異な現象が見られました。中国側からの対抗措置によって国民に実害が及んだとしても、内閣支持率が大きく低下したり、早期に高市首相の退陣論が浮上したりする可能性は低いと見られています。
国会議員の危機認識と党内の現状
自民党内の重鎮議員からは、今回の中国との対立の深刻さが党内でも十分に理解されていないという指摘があります。多くの国会議員は、問題の本質を理解するための学習を怠り、党幹部の顔色を窺う忖度発言に終始する行動パターンが常態化しているとされます。彼らは、ポストや選挙における優遇を得るためには、自身の研鑽よりも党幹部へのごますりが重要だと考えているようです。さらに、たとえ自ら学習し、首脳陣と異なる意見を述べたとしても、それが評価されるどころか、自身の政治生命を脅かす結果となるため、努力が無駄になるという現実も背景にあります。
評論家・古賀茂明氏の肖像
実際、高市首相の今回の発言がいかに問題のある暴言であるかを理解している議員は少数に過ぎないと考えられます。自民党の政策立案を担う小林鷹之政調会長が、中国の薛剣駐大阪総領事の「首斬り発言」に対し、「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放を求める趣旨の発言をしたことは、中国の強い反発の理由を全く理解していないことの証左と言えるでしょう。
具体的事例に見る問題点:小林政調会長と茂木外相の動向
一方、茂木敏充外相は、今回の問題の深刻さを正しく理解できる数少ない議員の一人ではないかと筆者は見ていました。政策通であり、第二次安倍政権でも外相を務めた経験から、日中関係や台湾問題にも精通しているはずです。しかし、その茂木外相が高市発言の撤回は不要であると明言しました。この発言は非常に重い意味を持っています。
日中首脳会談で握手する高市早苗首相と習近平国家主席
茂木氏については、その頭脳明晰さとは裏腹に、狡猾であるという評価も存在します。今回の問題がこじれることで、高市氏の政権運営が困難になるという計算があったのかもしれません。同時に、高市氏を支持する右派層の機嫌を取ることで、自身の支持拡大に繋がると考えた可能性も否定できません。自民党議員の現状を嘆いた前述の重鎮議員は、大多数の自民党議員を「馬鹿」か「自己中」だと厳しく断じています。
今回の事態は、単なる外交問題に留まらず、日本の政治家が国際情勢、特に日中関係の複雑さをどこまで理解し、国家の利益を真剣に追求しているのかという、根本的な資質を問い直す契機となっています。





