インフルエンザ感染リスク増大? 意外な「歯周病」との関連を日本大学が発表

「また今年もインフルエンザにかかってしまった……」。例年より早くインフルエンザの拡大が報じられている今年、「なんとか感染を防ぎたい」と願う人も少なくないでしょう。巷では「免疫力を上げる」や「ストレスを溜めない」などの対策が言われますが、最新の研究で、インフルエンザに感染しやすい人の「意外な弱点」が明らかになりました。それは「あなたのお口の中」に潜んでいます。

歯周病菌がインフルエンザ感染を促進するメカニズム

今年1月、日本大学歯学部の研究チームから非常に重要な論文が発表されました。「インフルエンザ」と「歯周病」という、一見まったく関係のない2つの疾患を関連付ける内容です。この研究でわかったのは、インフルエンザウイルスが私たちの体に感染する際に、歯周病の原因となる歯周病菌が持つ「毒素(酵素)」によって感染力が大幅に高まってしまうという事実です。つまり、インフルエンザウイルスにとって、歯周病菌は感染を手助けする「共犯者」のような存在になるのです。

インフルエンザと歯周病の関連性について議論するイメージ。日本大学歯学部の研究が示唆する新たな予防策インフルエンザと歯周病の関連性について議論するイメージ。日本大学歯学部の研究が示唆する新たな予防策

ウイルスの侵入を手助けする「ジンジパイン」の働き

さらに詳しく説明しましょう。インフルエンザウイルスが私たちの体(細胞)に入り込むためには、細胞表面にある「鍵穴」にぴったり合う「鍵」が必要です。専門的な言葉で解説すると、インフルエンザウイルスが持つ鍵に当たるのが「ヘマグルチニン(HA)」というタンパク質です。そして、これが結合する鍵穴に相当するのが、私たちの細胞表面にある「シアル酸」と呼ばれる分子になります。

ウイルスが単独で侵入を試みる場合、ウイルスが持つHA(鍵)を使い、なんとか細胞のシアル酸(鍵穴)へ結合しようとします。しかし、ここで歯周病菌が共犯者として関与すると状況は一変します。歯周病菌が持つ「ジンジパイン」などと呼ばれる「毒素(酵素)」が、細胞表面のシアル酸(鍵穴)に作用し、まるでピッキングのようにウイルスの侵入を手助けするのです。このピッキングにより、ウイルスは細胞の防御を簡単にすり抜け、VIP待遇で体内に入り込み感染に至ります。

この研究結果は、インフルエンザ予防において口腔ケア、特に歯周病予防の重要性を改めて浮き彫りにしています。日々の丁寧な歯磨きや定期的な歯科検診が、インフルエンザ感染リスクを低減するための新たな対策となり得るでしょう。