高市政権の「獅子身中の虫」:支持率堅調の陰に潜む不安定要素

高市早苗首相は、「存立危機事態」に関する衆院予算委員会での中国を巡る答弁で、中国政府を完全に怒らせてしまったものの、その国民からの人気は依然として衰えていない。11月22日から23日にかけて毎日新聞が実施した調査では内閣支持率が前月と同じ65%を維持し、21日から23日に行われた読売新聞とNNNの共同調査でも72%という高水準を保っている。しかし、この表面的な堅調さの裏で、政権内部には「獅子身中の虫」が蠢き始めており、下手をすれば政権の命運を左右する可能性すら秘めている。

佐藤啓官房副長官の「パーティー券問題」と国会出席の見送り

高市政権の内部問題の第一は、高市首相の「腹心」とも称される佐藤啓官房副長官の抱える問題だ。総務省出身の元キャリア官僚で、参議院奈良県選挙区選出の議員である佐藤氏は、「高市カラー」が色濃い人物とされ、昨年10月の政権発足時に「若手政治家の登竜門」と言われる官房副長官に抜擢された。

しかし、佐藤氏は2023年12月に派閥のパーティー券問題を巡る306万円の裏金が発覚し、財務大臣政務官を辞任している。2022年改選組である佐藤氏にとって、この問題は「選挙の洗礼」を受けたわけではなく、野党側からは「禊は済んでいない」と見なされ続けているのが現状である。

高市政権が外交問題だけでなく内部からも不安定化する可能性を示す写真高市政権が外交問題だけでなく内部からも不安定化する可能性を示す写真

その結果、佐藤氏は議院運営委員会への出席が認められず、衆議院側の尾﨑正直官房副長官がその職務を代行することになった。参議院での代表質問にも尾崎氏が陪席している。参院自民党の磯﨑仁彦国対委員長と参院立憲民主党の斎藤嘉隆国対委員長は11月25日、佐藤官房副長官が今国会期間中、参議院運営委員会などへの出席を見合わせることを確認した。磯﨑氏は年明けの通常国会での正常化に期待を寄せているものの、少数与党である自民党はこれまで以上に野党の意向を無視できない状況に陥っている。

高市首相は「いったん任命した人事を容易には白紙撤回しない」として佐藤氏を更迭しない方針を示しているが、いまだ参院内閣委員会での挨拶すら見送られている佐藤氏は、文字通り宙ぶらりんの状態にある。まさに高市政権にとっての「お邪魔虫」のような存在と言えるだろう。

黄川田仁志衆院議員の度重なる「失言」問題

「お邪魔虫」であればまだ可愛げがあるが、反省が見られない「失言王」には高市首相も手を焼いているのかもしれない。今年の自民党総裁選挙で高市氏の出馬会見の司会を務めた黄川田仁志衆院議員は、記者を「顔の濃い方」と指名し、顰蹙を買った。高市首相自身も「なんてことを言うの」と苦笑しながら諫めたが、黄川田氏はさらに「顔の白い、濃くない方」と次の記者を指名し、その場の空気を読めない一面を露呈させた。

結論:政権安定への課題

このように、高市政権は高い国民支持率を背景にしながらも、内部に佐藤啓官房副長官の資質問題や黄川田仁志衆院議員の失言癖といった複数の不安定要素を抱えている。これらの「獅子身中の虫」が、外交問題での強硬姿勢によって得た政権の安定性を内側から蝕む可能性があり、今後の政権運営においてこれらの内部問題をいかに管理し、解決していくかが重要な課題となるだろう。