日本各地で強風による被害が相次いでおり、その脅威は増す一方です。特に千葉市で発生した大規模な足場倒壊事故は、夜間の発生であったため奇跡的に死傷者が出なかったものの、その一歩手前の状況は、私たちがいかに異常気象のリスクに晒されているかを浮き彫りにしました。この背景には地球温暖化による気象パターンの変化が指摘されており、突風や竜巻といった激しい現象への警戒が不可欠となっています。
千葉市で起きた建設足場倒壊事故の衝撃
2025年10月31日夜10時半頃、千葉市緑区の中心部で、7階建てショッピングセンターの立体駐車場に設置されていた巨大な工事用足場が突然崩落しました。突風によって剥がれた足場は、下の遊歩道と駐輪場を覆い尽くすように倒れましたが、発生時刻が遅かったため、幸いにも負傷者はいませんでした。しかし、もしこれが昼間の人通りの多い時間帯であれば、大惨事につながっていた可能性は否定できません。
倒壊した足場は高さ約20m、幅約30mにも及ぶ巨大なもので、立体駐車場の壁面全体のおよそ3分の2が、秒速10mを超える強風によって一気に押し倒されたとみられています。現場の施設は大規模なショッピング施設を擁し、隣接する区役所周辺は日中の人通りが多く、総重量6t以上とみられる足場が人に直撃していれば、取り返しのつかない事態となっていたでしょう。
この施設を所有する新都市ライフホールディングスによると、立体駐車場の壁面塗装工事は同年6月から始まっており、倒壊した南面を残すのみとなっていたといいます。翌朝、現場を訪れた記者によると、無残に折れ曲がった足場の一部は区役所の敷地内にまで入り込み、養生シートには街路樹が突き刺さるなど、その破壊力の大きさを物語っていました。
当時、千葉市は竜巻注意情報の対象地域でした。現場近くにある千葉市消防局緑消防署の職員は、千葉県中央部に大雨、洪水、強風、波浪、雷注意報が発表されていたと証言しています。また、この場所は2019年9月に千葉県に大きな被害をもたらした台風15号の際にも強い風が吹いており、地形的に「風の通り道」となっている可能性も指摘されています。
事故が起きる前の千葉市緑区の建設現場付近の様子(グーグルストリートビューより)
頻発する突風と竜巻、過去の事例
強風による被害といえば、今年9月に静岡県牧之原市で発生した竜巻の記憶も新しいでしょう。この竜巻により、1人の死者と83人の重軽傷者、そして2200軒以上の住宅被害が発生しました。同じ9月には茨城県つくば市でも複数の竜巻が発生し、プレハブの建物を倒壊させるなどの被害をもたらしています。全国的に突風や竜巻の発生が立て続けに報告されており、その頻度と規模が増している傾向が見られます。
千葉市緑区で強風により倒壊した建設足場の現場
異常気象と地球温暖化:専門家の見解
全国で相次ぐ突風や竜巻の発生について、異常気象に詳しい三重大学の立花義裕教授は、地球温暖化との関連を指摘しています。千葉市で突風が吹いた日、県内を「爆弾低気圧」が通過していました。これは24時間で40hPa以上も気圧が下がる台風並みの低気圧で、秒速40m程度の強風や竜巻が発生しても不思議ではないと立花教授は解説します。
特に今年は観測史上最高の猛暑を記録し、海面水温が例年より高い状態が続いています。北極からの寒気と南方からの暖気の気温差が大きくなると、今回のような爆弾低気圧が発生しやすくなるのです。地球温暖化が進んだ結果、こうした強力な低気圧が発生しやすくなり、日本全国どこで猛烈な突風が吹いてもおかしくない状況になっていると警鐘を鳴らしています。
今後の日本が直面するリスク
これからの季節、日本は「殺人突風」とも呼ばれる猛烈な突風や竜巻のリスクに引き続き晒され続けるでしょう。異常気象はもはや「異常」ではなく、日常の一部となりつつあります。私たちは、地球温暖化がもたらす気候変動の影響を深く認識し、個人レベルでの防災意識の向上と、社会全体での災害対策の強化が喫緊の課題であることを再認識する必要があります。
参考文献
- FRIDAYデジタル. 「全国で続く強風被害 殺人突風で…!千葉市の足場倒壊現場」. Yahoo!ニュース, 2025年12月1日. https://news.yahoo.co.jp/articles/8e88493305d684a1480280ca6ab4014786bb314a





