漫画家ひうらさとる:40代で開花した「2本目の軸」と輝き続ける秘訣

人生100年時代と言われる現代において、キャリアと私生活の両面で「自分だけの花」を咲かせ続ける人々がいます。コラムニストの芳麗さんが紐解く、新しい時代の人物伝に今回登場するのは、漫画家のひうらさとるさん(59歳)です。彼女は『ホタルノヒカリ』、『西園寺さんは家事をしない』、『聖ラブサバイバーズ』など、時代ごとの女性のリアルを描き続け、40年以上にわたり第一線で活躍してきました。2024年にはデビュー40周年を迎え、その作品は令和の今も多くの共感を呼んでいます。この記事では、ひうらさんが40代以降に人生をさらに開花させた秘訣、そして漫画家として、また一人の個人として輝き続けるための「2本目の軸」について深く掘り下げていきます。

30代の迷走とキャリアの停滞

18歳で漫画家デビューを果たし、華々しいキャリアをスタートさせたひうらさんですが、30代半ばには深いスランプに陥りました。漫画家という自由な仕事を選びながらも、この時期は他者の目を強く意識してしまい、それが停滞の一因となっていたと振り返ります。私生活においても、結婚への焦りを感じ、世間で言う「モテる女性像」をなぞろうと、髪を長くし、フェミニンな服を身につけるなど努力を重ねていました。しかし、そのような努力にもかかわらず、恋愛はうまくいかず、閉塞感を抱えていたのです。

ひうらさんの「2本目の軸」ひうらさんの「2本目の軸」

40歳で訪れた転機:「どうでもいいや」と「推し活」との出会い

人生の転機は40歳で訪れました。ある日、「もうどうでもいいや。モテなくてもいいや」と、長年の心の重荷がふっと軽くなった感覚に襲われたと言います。この吹っ切れをきっかけに、彼女は髪をショートにし、本当に好きな服を着るようになります。私生活全体がより自由になり、心から楽しいと感じられる日々が始まったのです。この大きな変化の背景には、自己分析によると「推し」との出会いが大きかったとひうらさんは語ります。40歳にして友人に誘われ、初めて行ったKAT-TUNのコンサートで彼らのファンになったことで、彼女の世界は一気に開かれました。ステージで輝く彼らにときめき、それまで自分とは無縁だと思っていた「推し活」が、新たな喜びとエネルギーをもたらしたのです。

輝き続ける秘訣:「2本目の軸」がもたらす変化

「推し活」との出会いは、ひうらさんに新たな視点と活力を与えました。それは、漫画家としてのキャリアを支える「1本目の軸」とは異なる「2本目の軸」となり、彼女の人生に豊かな彩りを加えたのです。好きなことに夢中になり、自分の感情に素直になることで、内面から湧き上がる自由なエネルギーは、創作活動にも良い影響を与えました。年齢や経験を重ねるごとに、一度きりではない「自分だけの花」を何度でも咲かせることができるという、ひうらさんの生き方は、「人生100年時代」を豊かに生きるためのヒントを与えてくれます。他者の目を気にせず、自分自身の「好き」を追求することが、個人として、またクリエイターとしての輝きを長く持続させる秘訣なのです。

ひうらさとるさんの物語は、キャリアの停滞や人生の迷走期を経験しても、40代という節目で新たな自分を発見し、情熱を傾けられる「2本目の軸」を見つけることで、さらに人生を豊かにできることを教えてくれます。自己受容と「推し」との出会いを通じて得た自由な精神こそが、彼女が漫画家として、そして一人の人間として、これからも輝き続けるための原動力となるでしょう。


参考文献