2026年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟！』で初めて主人公となる豊臣秀吉の弟、豊臣秀長。芸能界屈指の大河ドラマファンであり歴史系YouTuberの松村邦洋氏は、秀長を「メジャーリーガー秀吉の敏腕代理人」と表現しています。その言葉に込められた意味とは何でしょうか？本記事では、これまで兄の輝かしい功績の陰に隠れがちだった秀長の知られざる生涯と、彼がいかに豊臣政権の礎を築いたのかを深掘りします。
3年ぶりの「戦のある」大河ドラマが描く戦国時代
いよいよ始まるNHK大河ドラマ『豊臣兄弟！』は、『どうする家康』（2023年）以来、3年ぶりに「戦のある」大河が帰ってくることを意味します。源平合戦、幕末と並ぶ大河ドラマの三大定番である戦国・安土桃山時代は、常に高い注目を集めてきました。特に織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の三英傑は多くの日本人が知っており、その物語は視聴者にとって安心感があります。毎回異なる視点から描かれることで、新たな発見と魅力が生まれるのです。
松村邦洋氏は、子供の頃に見た『風と雲と虹と』（1976年）で大河ドラマに夢中になり、以来ほぼ全ての作品を視聴しています。彼のYouTubeチャンネル「松村邦洋のタメにならないチャンネル」やNHK第一ラジオ「DJ日本史」での豊富な歴史知識は、まさに大河ドラマから得た映像とストーリーによって培われたものです。
豊臣秀長：秀吉を天下人にした影の功労者
今回の大河ドラマの主人公は、豊臣秀吉の実弟である秀長です。彼は、天下統一という成功への階段を駆け上がっていく兄・秀吉の道のりを、常にそばで伴走し続けました。かつて佐久間良子さんが秀吉の妻・寧々を、西田敏行さんが秀吉を演じた『おんな太閤記』（1981年）がありましたが、今回の作品はまさに「おとうと太閤記」とも言えるでしょう。
一般的に秀長はあまり知られた存在ではありません。兄・秀吉の放つまばゆい光の陰に隠れていたためです。作家の堺屋太一氏が著した小説『豊臣秀長〜ある補佐役の生涯』（1985年）をきっかけに、ようやくその名が世に知られるようになりました。
しかし、秀長は非常に仕事のできるナンバー2でした。彼の存在なくして、秀吉が天下を取ることは不可能だったと言われています。さらに、もし秀長が長生きしていれば、秀吉は晩年にあのような狂気的な振る舞いをすることはなかっただろうとも言われています。秀吉が天下を取った後、豊後国の大友宗麟が大坂城で秀長に相談を持ちかけた際、秀長自身が「公儀のことは私、秀長に、内々のことは（千）利休にご相談ください」と伝えた逸話は有名です。これは、政治や軍事といった公的な事柄は秀長が担当し、よりデリケートな相談は茶道の巨人である千利休に、という意味でした。秀長は、全国の大名たちにとって秀吉に通じる二大相談窓口の一つだったのです。彼は秀吉の「敏腕代理人」として、その政治手腕と調整能力で豊臣政権を支え続けました。
松村邦洋氏
豊臣秀長画像（春岳院所蔵）
結論：秀長の功績が照らす新たな視点
豊臣秀長は、その卓越した補佐能力と政治手腕で、兄・秀吉の天下統一事業を盤石なものにしました。彼の早すぎる死が秀吉の晩年に大きな影響を与えたという説は、その存在の大きさを物語っています。2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟！』は、これまで歴史の陰に隠れがちだった秀長という人物に光を当て、彼がいかに日本の歴史に深く貢献したかを再評価する貴重な機会となるでしょう。このドラマを通して、多くの人々が豊臣秀長の功績を知り、新たな歴史の視点を発見することに期待が寄せられています。
参考文献
- 松村邦洋. 『松村邦洋とにかく「豊臣兄弟！」を語る』. プレジデント社.
- Yahoo!ニュース. 「豊臣秀吉の弟・秀長が初めて主人公となる2026年のNHK大河ドラマ「豊臣兄弟！」。芸能界きっての大河フリーク＆歴史YouTuber・松村邦洋さんは秀長を「メジャーリーガー秀吉の敏腕代理人」と表現する」. 2025年12月5日掲載.
- PRESIDENT Online. 「豊臣秀長〜ある補佐役の生涯」.
